相続登記はまず何から始める?手続きの流れ5ステップと期間の目安【2027年3月の期限から逆算】

「相続登記をしないといけないのは分かったのですが、まず何から手を付ければいいですか?」
ご相談の場で、いちばん多く伺う質問です。相続登記は、やること自体はそれほど複雑ではありません。ただ、順番を間違えると二度手間になる手続きがいくつかあります。
たとえば、先に遺産分割の話し合いをまとめてしまってから、あとで「名義の分からない土地がもう1筆あった」と分かると、話し合いからやり直しです。
この記事では、相続登記を5つのステップに分けて、それぞれ何をするのか、どれくらい時間がかかるのかを順に説明します。あわせて、2027年3月31日という期限から逆算して、いつ動き出せばよいかも示します。
相続登記の流れ【全体像】5ステップと期間の目安
まず全体像です。上から順に進めます。
| ステップ | やること | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 不動産を洗い出す(何を相続したかを確かめる) | 1〜2週間 |
| 2 | 相続人を確定する(戸籍を集める) | 2週間〜2か月 |
| 3 | 誰の名義にするかを決める(遺産分割協議) | ケースによります |
| 4 | 書類を作る(協議書・申請書) | 1週間ほど |
| 5 | 法務局へ申請する | 完了まで1週間〜1か月 |
順調に進めば1〜2か月が目安です。ただし、ステップ2と3は事情によって大きく延びます(後ほど説明します)。
ポイントは、1と2を先に終わらせることです。何があって誰が相続人かが固まらないうちに話し合いを始めても、やり直しになりやすいからです。
ステップ1 不動産を洗い出す(1〜2週間)
最初にやるのは、亡くなった方がどの不動産を持っていたかを、もれなく確かめることです。
使うもの
| 道具 | 分かること | 取るところ |
|---|---|---|
| 固定資産税の納税通知書 | 課税されている不動産の一覧 | 毎年春に届いているもの |
| 名寄帳 | その市区町村にある持ち物の一覧 | 不動産のある市区町村(相続人なら請求できます) |
| 所有不動産記録証明書 | 全国の不動産を1通で確認 | 法務局(2026年2月に始まった制度です) |
| 登記事項証明書 | 今の名義・担保の有無 | 法務局(1通600円・全国どこでも取れます) |
| 登記情報 | 同上(画面で見るだけ) | インターネット(1件330円・平日は夜11時まで) |
登記事項証明書と登記情報の違いは、提出に使えるかどうかです。登記情報提供サービスは、法務局の登記記録をインターネットで見られるもので、1件330円と安く、平日は夜11時まで(土日祝は夕方6時まで)使えます。ただし証明書ではないため、法務局や金融機関へ提出する書類としては使えません。
まず中身を確かめたいだけなら登記情報、提出に使うなら登記事項証明書、と使い分けてください。
見落としやすいもの
- 私道の持分……前面道路の一部を近隣の方と共有しているケースです。固定資産税が非課税だと納税通知書に載らず、名寄帳にも出ない市区町村があります
- 田・山林・原野……遠方にあって、家族も把握していないことがあります
- マンションの敷地権……建物とは別に、駐車場や集会所の持分が登記されていることがあります
- 共有になっている実家……亡くなった方の持分だけが残っているケースです
ここで1つ見落とすと、数年後にもう一度、同じ戸籍を集め直すことになります。最初に時間をかける価値があるステップです。
ステップ2 相続人を確定する(2週間〜2か月)
次に、法律上、誰が相続人になるのかを戸籍で確かめます。「家族だから分かっている」と思っていても、戸籍をたどって初めて分かることがあります。
集める戸籍
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含みます)
- 相続人全員の現在の戸籍
亡くなった方の戸籍は、結婚・転籍・法改正のたびに新しく作られているので、1通では終わりません。多い方だと5〜10通になります。
とくに本籍を何度も移している(転籍を繰り返している)方は、その土地ごとに請求していくことになるため、通数が増えます。集め終わるまでに2か月ほどかかることもあります。
戸籍集めは2024年から楽になりました
2024年3月に始まった広域交付制度により、本籍地が遠方にあっても、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できるようになりました。札幌にお住まいなら、区役所の窓口で全国分を請求できます。
ただし制限があります。
- 請求できるのは本人・配偶者・親や祖父母・子や孫まで。兄弟姉妹の戸籍は対象外です
- 窓口で本人が請求します(郵送や代理人による請求はできません)
- 顔写真付きの本人確認書類が必要です
- コンピュータ化されていない古い戸籍・除籍は対象外で、その分は本籍地の市区町村へ別に請求します
「窓口でその日に全部そろう」とは限りません
広域交付制度については、窓口へ行けばその場で必要な戸籍がすべて出てくると思われていることがあります。実際には、そうとは限りません。
通数が多ければその場では出ず、後日の交付になることがあります。コンピュータ化されていない戸籍・除籍があれば、その分は本籍地の市区町村へあらためて請求することになります。電算化の時期は市区町村ごとに違うので、同じ相続でも「ここは窓口で出たが、ここは郵送で取り寄せ」ということが起こります。1〜2か月かかることもありますので、時間に余裕をもって始めてください。
兄弟姉妹が相続人になるケース(お子さんがいない方の相続など)は、広域交付が使えないうえに、集める戸籍の範囲も広くなります。ここはとくに時間がかかります。
必要な書類の一覧は、相続登記の必要書類チェックリストで詳しく説明しています。
ステップ3 誰の名義にするかを決める(期間はケースによります)
相続人が確定したら、誰がその不動産を取得するかを決めます。相続人全員の話し合い(遺産分割協議)です。
全員が合意すれば、分け方は自由です。期間はケースによります。その日のうちに決まることもあれば、何か月もかかることもあります。
決めるときに気をつけたいこと
- 共有にするのは慎重に……兄弟で2分の1ずつという分け方は公平に見えますが、売るときや建て替えるときに全員の同意が必要になります。次の相続が起きると共有者がさらに増えます
- 不動産は分けにくい……預貯金と違って切り分けられません。不動産は1人が取得し、他の相続人には預貯金を多めに、といった調整がよく使われます
- 話し合いがまとまらないときは……ステップ4に進めません。この場合の対処は後ほど説明します
遺言書がある場合は、この話し合い自体が不要です。遺言書のとおりに進めます。
ステップ4 書類を作る(1週間ほど)
話し合いがまとまったら、書面にします。
- 遺産分割協議書……相続人全員が署名し、実印を押します。全員の印鑑証明書も添えます
- 相続関係説明図……戸籍の内容を家系図のかたちにまとめたものです。これを付けると、提出した戸籍を返してもらえます
- 登記申請書……法務局へ出す書類です
2026年10月5日から変わった点
不動産を取得する方の住民票は「本籍地の記載があるもの」を用意してください。窓口で何も言わないと本籍は省略されます。
あわせて、国籍等の申し出が必要になりました。外国籍の方だけの話ではなく、日本の方も「日本」と申し出ます。本籍の記載がある住民票を出しておけば、住所の証明と兼ねられます。
ステップ5 法務局へ申請する(完了まで1週間〜1か月)
書類がそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。亡くなった方の住所地でも、相続人の住所地でもありません。どこが管轄かは、法務局の管轄のご案内で調べられます。
申請の前に
登録免許税を計算します。相続登記の税率は固定資産評価額の0.4%です(評価額2,000万円なら8万円。国税庁の登録免許税の税額表に一覧があります)。評価額は、申請する年度の固定資産評価証明書か課税明細書で確認します。年度をまたぐと取り直しになります。
なお、評価額が100万円以下の土地は、登録免許税がかからない特例があります。私道の持分や山林が含まれる場合は、確認しておくとよいでしょう。
申請してから完了まで
法務局での審査にかかる期間は、管轄の法務局によってかなり違います。札幌の法務局であればおおむね1〜2週間ですが、1か月ほどかかる法務局もあります。不備があると「補正」の連絡が来て、その分だけ延びます。
各法務局のホームページには、登記完了予定日が掲載されています(札幌の場合は札幌法務局の登記完了予定日)。申請先が決まったら、そこで目安を確認してください。
完了すると、登記識別情報通知(いわゆる権利証にあたるもの)が交付されます。これは再発行ができないので、大切に保管してください。
全体でどれくらいかかる? 長引くのはこんなとき
順調なら1〜2か月ですが、次のようなケースは半年以上かかることもあります。
| 長引くケース | 理由 |
|---|---|
| 兄弟姉妹が相続人 | 広域交付が使えず、集める戸籍の範囲も広い |
| 相続人の人数が多い | 全員から実印と印鑑証明書をもらうのに時間がかかる |
| 連絡の取れない相続人がいる | 所在の調査から始めます |
| 何代も登記をしていない | 相続が重なり、相続人が数十人になることもあります |
| 話し合いがまとまらない | 調停など、別の手続きが必要になることがあります |
| 古い戸籍が焼失している | 代わりの証明書を集めます |
「うちは単純だから」と思っていても、戸籍を開けてみて初めて分かることがあります。早めに動き出しておくと、こうしたケースでも慌てずに済みます。
2027年3月31日の期限から逆算すると、いつ動けばいい?
相続登記は、2024年4月から義務になりました。相続を知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
そして、2024年3月以前に発生した相続——つまり「何年も前に親が亡くなったが、名義はそのまま」というケースにも義務があり、その期限が2027年3月31日です。
逆算すると、こうなります。
| 状況 | いつまでに動き出すか |
|---|---|
| 相続人が少なく、話し合いもまとまっている | 2027年1月までには着手 |
| 相続人が多い・遠方にいる | 2026年中に着手 |
| 兄弟姉妹が相続人・何代も登記していない | 今すぐ着手 |
年末から年度末は、役所も法務局も混み合います。期限ぎりぎりに動き出すと、間に合わないおそれがあります。
期限や過料について詳しくは、相続登記の義務化はいつまで?過料を避ける期限と対処法をご覧ください。
間に合いそうにないときは「相続人申告登記」
話し合いがまとまらない、相続人が多すぎて集まらない——期限までに登記ができそうにないときのために、相続人申告登記という制度があります(2024年4月から)。
- 自分ひとりで申し出ることができます(他の相続人の協力は要りません)
- 「自分が相続人です」と法務局に申し出るもので、これで義務を果たしたことになります
- ただし、名義が変わるわけではありません。売ったり担保に入れたりはできないので、あくまで時間を稼ぐための手続きです
話し合いがまとまったら、あらためて相続登記をします。
つまずきやすいポイント
ご相談を受けていて、よく出てくるところを挙げておきます。
- 登記簿の住所と、亡くなった方の最後の住所がつながらない……引っ越しが登記に反映されていないケースです。住民票の除票や戸籍の附票で、つながりを示します
- 評価証明書の年度……申請する年度のものが必要です。3月末から4月はじめの申請は特に注意してください
- 印鑑証明書を先に集めすぎる……登記には期限がありませんが、話し合いが長引くと、金融機関の手続きで「3か月以内」が求められて取り直しになることがあります
- 遺言書を勝手に開けてしまう……自筆の遺言書(法務局に預けていないもの)は、家庭裁判所の検認が必要です
よくある質問
Q. 相続登記は自分でできますか?
できます。ただし、戸籍の読み取りや、数次相続(相続の途中でさらに相続が起きているケース)でつまずく方が多いです。平日に法務局へ行く時間も必要です。詳しくは相続登記は自分でできる?費用と手間の違いをご覧ください。
Q. 費用はどれくらいかかりますか?
登録免許税(評価額の0.4%)、戸籍などの実費、司法書士に依頼する場合は報酬がかかります。内訳は相続登記の費用はいくら?総額の目安と内訳にまとめています。
Q. どのステップから頼めますか?
どこからでもお引き受けできます。いちばん多いのは、ステップ1の前——「何があるのかも分からない」という段階でのご相談です。不動産の洗い出しから、戸籍の収集、協議書の作成、申請までまとめてお任せいただけます。
Q. 相続人の一人が遠方にいても手続きできますか?
できます。遺産分割協議書を郵送でやり取りし、各相続人に実印を押していただく形が一般的です。全員が一堂に集まる必要はありません。
まとめ:順番どおりに進めるのが、いちばんの近道
- 相続登記は①不動産の洗い出し →②相続人の確定 →③話し合い →④書類作成 →⑤申請の5ステップ
- 順調に進めば1〜2か月。兄弟姉妹の相続や、何代も登記していないケースは半年以上かかることもあります
- 1と2を先に終わらせる。これが固まらないうちに話し合いを始めると、やり直しになりやすいです
- 戸籍は広域交付で最寄りの区役所からまとめて請求できます(兄弟姉妹の戸籍は対象外)
- 2026年10月5日から、住民票は「本籍地の記載があるもの」で用意します
- 2027年3月31日が、2024年3月以前に起きた相続の期限です。間に合わないときは相続人申告登記で義務を果たせます
「うちはどこから手を付ければいい?」を無料でご案内します
ルフレ司法書士事務所(札幌市中央区・地下鉄東西線 西18丁目駅から徒歩1分)では、今どの段階にいて、次に何をすればよいかを整理するところからお手伝いしています。固定資産税の納税通知書と、分かる範囲のご家族の関係を教えていただければ、必要な手続きと期間の見通しをお伝えできます。初回相談は60分無料です。
※本記事は令和8年10月時点の法令・運用に基づきます。手続きの期間は個別の事情や管轄の法務局により異なります。
監修:ルフレ司法書士事務所 司法書士 五十嵐規晴(札幌司法書士会)
