役員重任の登記忘れはまだ間に合う!ペナルティと今すぐできる対処法完全ガイド

役員重任の登記を忘れても、まだ間に合います。登記懈怠には最大100万円の過料や「みなし解散」のリスクがありますが、正しい手順を踏めば解決可能です。本記事では、登記忘れに気づいたらまず確認すべきことから、具体的な対処法の3ステップ、必要書類、費用まで網羅的に解説。この記事を読めば、不安を解消し、最善の対応が取れるようになります。

目次

役員重任の登記を忘れたらまず確認すべきこと

役員重任とは、取締役や監査役などの役員が任期満了後も引き続き同じ役職に就任することを指します。役員が退任と同時に時間をおかずに再任される場合、登記簿上「重任」と記載されます。

「役員重任の登記を忘れていた!」と気づいたとき、多くの方が焦りや不安を感じるかと思います。しかし、慌てる必要はありません。まずは落ち着いて、会社の現状を正確に把握することが解決への第一歩です。ペナルティを最小限に抑え、適切に対処するためにも、最初に以下の3つのポイントを確認しましょう。

この最初のステップを確実に行うことで、その後の手続きをスムーズに進めることができます。会社の重要書類を確認しながら、一つずつチェックしていきましょう。

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いつから登記を忘れているか(登記懈怠期間)

役員重任の登記忘れで最も気になるのが、ペナルティである「過料」の金額ではないでしょうか。この過料の額に大きく影響するのが、「いつから登記を怠っているか」、つまり「登記懈怠(とうきけたい)期間」です。

登記懈怠期間とは、本来登記すべき期限(役員の任期満了後2週間以内)を過ぎてから、実際に登記申請を行うまでの期間を指します。この期間が長くなるほど、過料の金額も高くなる傾向にあります。

正確な懈怠期間を把握するために、まずは会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や登記情報(登記情報提供サービスで取得)を取得して確認しましょう。登記簿謄本は、管轄の法務局の窓口や郵送、またはオンラインで請求できます。(取得方法はこちら

登記簿謄本の「役員に関する事項」欄を見れば、最後に登記された役員の就任年月日が記載されています。その日付と、後述する定款で定められた役員の任期を照らし合わせることで、いつ任期が満了し、いつまでに登記すべきだったのかが判明します。(厳密には、役員の任期の基準日は「就任日」ではなく「選任日」ですが、ほとんどの場合、「選任日」=「就任日」となりますので、本記事では、登記簿謄本の就任年月日を基準日として解説します)

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会社の役員の任期満了日はいつか

そもそも本当に登記を忘れているのか、いつが本来の期限だったのかを確定させるために、自社の役員の任期を正確に把握する必要があります。役員の任期は、会社の「定款」で定められています。

会社の設立時に作成した定款の原本を確認し、「役員の任期」に関する条文を探してください。株式会社における役員の任期は、会社法で以下のように定められています。

役員の種類原則の任期非公開会社(株式譲渡制限会社)の場合
取締役選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで定款で定めることにより、最長で選任後10年まで伸長可能
監査役選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで定款で定めることにより、最長で選任後10年まで伸長可能(取締役と任期を合わせるケースが多い)

多くの中小企業は株式の譲渡に制限を設けている「非公開会社」であり、定款で役員の任期を最長の10年に設定しているケースが少なくありません。任期が10年の場合、設立から10年間は役員変更登記が不要なため、登記手続き自体を失念してしまうことがよくあります。

登記簿謄本や登記情報の「役員に関する事項」欄に、最後に登記された役員の就任年月日が記載されていますので、そこから任期を計算をします。この任期満了日から2週間以内が、本来の登記申請期限です。

「みなし解散」の状態になっていないか

登記懈怠を長期間放置している場合、最も注意すべきが「みなし解散」です。これは、最後の登記から12年以上が経過した株式会社について、法務局が「すでに事業を廃止している休眠会社」とみなし、職権で解散の登記をしてしまう制度です。

みなし解散の状態になっていないか、以下の方法で確認してください。

  • 法務局からの通知の有無を確認する
    みなし解散の対象となる会社には、事前に法務局から本店所在地宛に「事業を廃止していない場合は2ヶ月以内に届け出るように」という内容の通知書が郵送されます。この通知が届いていないか、過去の郵便物を確認してみましょう。
  • 登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する
    最も確実な方法は、会社の登記簿謄本を取得することです。もし、みなし解散の登記がされている場合、登記記録に「令和〇年〇月〇日会社法第472条第1項の規定により解散」といった記載がされています。
  • 国税庁法人番号公表サイトで確認する
    国税庁の法人番号公表サイトで自社を検索し、登記記録の状態が「解散」となっていないか確認することもできます。

万が一、みなし解散の状態になっていたとしても、すぐに会社が消滅するわけではありません。解散の登記から3年以内であれば、「会社継続」の登記を行うことで事業を再開することが可能です。ただし、手続きは通常の役員重任登記よりも複雑になります。まずは自社がこの深刻な状態に陥っていないかを、最優先で確認してください。

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役員重任の登記忘れで科されるペナルティと重大なリスク

役員重任の登記を忘れてしまうと、「ついうっかり」では済まされない重大なペナルティやリスクが発生します。これは単なる手続きの遅れではなく、会社法という法律に違反する行為です。具体的にどのような事態に陥る可能性があるのか、正確に理解しておくことが迅速な対処への第一歩となります。

ここでは、登記忘れによって科される「過料」、会社の存続に関わる「みなし解散」、そして事業運営に直接影響する「信用の低下」という3つの大きなリスクについて詳しく解説します。

会社法違反による過料(最大100万円)の制裁

役員の任期が満了してから2週間以内に重任の登記申請を行わなかった場合、会社法第976条の規定に基づき、会社の代表者個人に対して100万円以下の「過料(かりょう)」が科される可能性があります。

この状態は「登記懈怠(とうきけたい)」と呼ばれ、法律で定められた義務を怠ったことに対する制裁です。注意すべき点は、過料は会社の経費としては認められず、代表取締役や理事などが個人として支払わなければならない点です。また、過料は刑事罰である「罰金」とは異なり、行政上の秩序罰であるため前科が付くことはありませんが、金銭的な負担が生じることに変わりはありません。

過料の通知はいつ来る?金額の相場は?

過料の通知は、登記忘れに気づいて登記申請を行った後、すぐに届くわけではありません。登記申請を受け付けた法務局が登記懈怠の事実を管轄の地方裁判所に通知し、その後、裁判所での審査を経て、代表者個人の住所宛に「過料決定」の通知書が送付されるという流れが一般的です。そのため、登記申請から数ヶ月後、忘れた頃に通知が来ることが多くあります。

過料の金額は、法律上100万円以下と定められていますが、実際の金額は登記を懈怠していた期間の長さや会社の状況などを考慮して裁判官が決定します。明確な基準は公表されていませんが、実務上の相場としては2~5万円程度で、10年以上放置していた場合に、10万円の過料が科されるケースもあります。

12年間登記がないと会社が解散させられる「みなし解散」

役員重任登記を長期間にわたって放置すると、過料よりもさらに深刻な事態を招く可能性があります。それが「休眠会社のみなし解散」です。

会社法第472条の規定により、株式会社で最後の登記から12年間、何も登記申請が行われていない会社(休眠会社)は、法務大臣による官報公告の後、事業を継続していない「みなし解散」の状態とされてしまいます。

この手続きは毎年行われており、対象となった会社には法務局から「事業を廃止していない場合は2ヶ月以内にその旨を届け出るか、必要な登記申請を行うように」という通知が届きます。この通知を無視して期間内に対応しなかった場合、会社は職権で解散登記がなされ、法的に解散したものとして扱われます。一度みなし解散されると、通常の事業活動はできなくなり、会社を元に戻すには「会社継続の登記」という煩雑で追加費用のかかる手続きが必要になります。

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金融機関や取引先からの信用低下

法的なペナルティだけでなく、ビジネス上の信用を失うという実質的なダメージも計り知れません。会社の登記事項証明書(登記簿謄本)は誰でも法務局で取得できるため、登記懈怠の事実は外部から容易に確認できてしまいます。

具体的には、以下のような場面で深刻な問題となる可能性があります。

  • 金融機関からの融資:融資の審査では、登記事項証明書の提出が必須です。登記が長期間更新されていないと、コンプライアンス意識の低い会社、管理体制が杜撰な会社と判断され、新規融資を断られたり、融資条件が悪化したりする大きな要因となります。
  • 取引先との契約:大手企業との取引や新規取引を開始する際、与信調査の一環として登記情報を確認されることがあります。登記懈怠が発覚すれば、会社の信頼性が疑われ、契約を見送られるリスクがあります。
  • 許認可の更新や入札:事業に必要な許認可の更新手続きや、公共事業の入札参加資格の審査において、法令遵守の証明として最新の登記事項証明書の提出を求められることがあります。この際に登記懈怠が発覚すると、手続きが滞ったり、資格を失ったりする可能性があります。

このように、役員重任登記の懈怠は、知らないうちに会社の社会的信用を大きく損ない、事業の継続そのものを困難にさせるリスクをはらんでいるのです。

【期間別】役員重任登記を忘れた場合の具体的な対処法

役員重任の登記忘れに気づいたとき、まず確認すべきは「いつから登記を忘れているか」です。登記を懈怠していた期間によって、手続きの緊急度や注意点が異なります。ここでは、登記を忘れていた期間別に、具体的な対処法を詳しく解説します。

数ヶ月から1年程度の比較的短い期間の登記忘れ

役員の任期満了日から数ヶ月、あるいは1年程度の比較的短い期間、登記を忘れていたケースです。この場合、会社法で定められた登記期限(任期満了から2週間以内)は過ぎていますが、手続き自体は通常の役員重任登記と大きくは変わりません。

しかし、登記懈怠(とうきけたい)の状態であることに変わりはなく、放置すれば過料の制裁を受けるリスクが高まります。気づいた時点で、一日でも早く以下の手続きを進めることが重要です。

  1. 定款で定められた手続きに則って株主総会を開催し、役員を重任(再任)する決議を行います。
  2. 登記申請の添付書類(詳しくはこちら)を作成します。
  3. 登記申請書と上記書類を揃え、管轄の法務局へ登記申請を行います。

この段階であれば、手続きは比較的シンプルです。過料の通知が届く前に自主的に登記申請を行うことで、裁判所の判断によっては過料の金額が低く抑えられる可能性もあります。決して「まだ大丈夫だろう」と先延ばしにせず、速やかに行動しましょう。

数年単位で長期間登記を忘れていた場合の注意点

数年間にわたって役員重任の登記を忘れていた場合、手続きはより複雑になり、注意すべき点も増えます。過料の金額も、懈怠期間に比例して高額になる傾向があります。このケースで特に注意すべき点は以下の通りです。

懈怠期間中の役員の任期満了と重任の証明

例えば、役員の任期が2年の会社で6年間登記を忘れていた場合、理論上は3回の任期満了と重任があったことになります。この場合、登記申請では、最後に登記された役員が任期満了の都度、適法に重任され、現在もその役員が在任していることを証明する必要があります。

実務上は、懈怠していた期間中の各任期満了時にそれぞれ株主総会で重任決議があったものとして、複数期分の「株主総会議事録」を作成し、まとめて登記申請を行うのが一般的です。どの時点の株主総会議事録が必要になるかは会社の状況によって異なるため、判断が難しい場合は専門家である司法書士に相談することをおすすめします。

懈怠期間中の役員の変更の有無

長期間登記を放置している間に、役員が辞任・死亡していたり、住所変更があったりするケースも少なくありません。その場合、役員重任の登記とあわせて、辞任や死亡、住所変更といった各種変更登記も同時に申請する必要があります。手続きが煩雑になるため、自力での対応は困難な場合が多くなります。

専門家への相談を強く推奨

数年単位の登記懈怠は、必要書類の判断や作成が複雑になりがちです。誤った内容で申請すると、法務局での補正指示に時間がかかったり、最悪の場合、申請が却下されたりするリスクもあります。無駄な時間と労力を避け、確実かつ迅速に問題を解決するためにも、司法書士への相談を強く推奨します。専門家であれば、会社の状況を正確に把握し、最適な手続きを提案してくれます。

みなし解散してしまった場合の「会社継続」の登記手続き

株式会社が最後の登記から12年間何も登記申請を行わないでいると、法務局の職権により「みなし解散」の登記がなされます。これは、会社が事業活動を停止しているとみなされ、強制的に解散させられた状態です。この段階になると、通常の役員重任登記はできず、会社を復活させるための特別な手続きが必要になります。

もし事業を再開したいのであれば、みなし解散の登記がされてから「3年以内」に「会社継続」の手続きを行わなければなりません。この3年という期限を過ぎてしまうと、会社を復活させることはできなくなり、清算手続きを進めるしかなくなります。

会社継続のための手続きは、以下の流れで進めます。

  1. 株主総会で「会社継続」の特別決議を行う
    まず、株主総会を招集し、会社を継続する旨の決議を行います。この決議は、通常の決議(普通決議)よりも可決要件が厳しい「特別決議」(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。
  2. 新たな役員を選任する
    みなし解散の状態では、それまでの取締役は全員退任し、代わりに「清算人」が就任したとみなされます。そのため、会社継続の決議とあわせて、新たに会社を経営していく取締役などの役員を選任する決議も行います。
  3. 法務局へ登記申請を行う
    株主総会の決議後、2週間以内に管轄の法務局へ登記申請を行います。この際、複数の登記を同時に(または関連付けて)申請する必要があります。

具体的に必要となる登記申請は以下の通りです。

登記の種類主な内容と目的
清算人就任の登記みなし解散によって法律上就任したとみなされる清算人を登記します。(会社継続の登記の前提として必要になる場合があります)
会社継続の登記株主総会の特別決議に基づき、会社が事業活動を再開することを登記します。
役員就任の登記会社継続に伴い、新たに選任された取締役などの役員を登記します。

みなし解散からの会社継続手続きは、必要書類も多く、登記申請も極めて専門的かつ複雑です。この手続きを自力で行うことは非常に困難であるため、必ず司法書士に依頼するようにしてください。

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申請後、法務局での審査を経て、通常1週間から2週間程度で登記が完了します。登記が完了したら、登記情報や登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、正しく登記が反映されているか必ず確認しましょう。

【今すぐできる】役員重任の登記忘れの対処法を3ステップで解説

役員重任の登記を忘れていたことに気づいても、決して手遅れではありません。焦る気持ちは察しますが、落ち着いて正しい手順を踏めば必ず手続きを完了できます。ここでは、登記忘れに気づいた方が今すぐ取り組むべき対処法を、具体的な3つのステップに分けて詳しく解説します。

ステップ1 登記に必要な株主総会の開催と議事録の作成

役員の選任(重任)は、会社法で定められた株主総会の決議事項です。そのため、登記手続きの前提として、まず株主総会を開催し、役員が再任されたことを正式に決議する必要があります。

本来であれば任期満了前に行う定時株主総会で決議しますが、登記を忘れていた場合は、臨時株主総会を速やかに招集して決議を行います。この株主総会で役員の重任が承認されたら、その証明として「株主総会議事録」を作成します。

株主総会議事録は、後の登記申請で法務局に提出する必須書類です。以下の項目を正確に記載します。なお、株主総会議事録への押印義務はありません。しかし、定款に定めがある場合や、代表取締役を選任する場合など、例外的に押印が必要となるケースがあります。

  • 株主総会の開催日時および場所
  • 株主の総数、発行済株式総数、議決権のある株主数およびその議決権数
  • 出席株主数およびその議決権数
  • 出席した役員の氏名
  • 議長の氏名
  • 議事の経過の要領およびその結果(役員重任の議案、選任された役員の氏名、決議が可決された旨など)
  • 議事録作成者の氏名

ステップ2 役員重任登記の必要書類を準備する

株主総会で重任が決議されたら、法務局へ申請するための書類を準備します。会社の状況によって必要な書類は多少異なりますが、主に以下の書類が必要です。

役員変更登記申請書

登記申請のメインとなる書類です。法務局のウェブサイトでテンプレート(ひな形)をダウンロードできます。記載すべき主な項目は以下の通りです。

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 登記の事由(例:「取締役、監査役の変更」)
  • 登記すべき事項(重任した役員の氏名、役職、就任年月日など)
  • 登録免許税額(資本金1億円以下の会社は1万円)
  • 添付書類の一覧
  • 申請年月日、申請人(会社の代表者)、連絡先の電話番号

「登記すべき事項」には、いつから役員が重任したのかを明確に記載します。本来の任期満了日の翌日が就任日となります。

株主総会議事録

ステップ1で作成した、役員の重任を決議した株主総会の議事録です。原本を提出します。

就任承諾書

重任した役員が、その役職に就くことを承諾した旨を証明する書類です。重任する役員全員分が必要となります。書面には、役員の住所・氏名を記載し、押印が必要になりますが、重任の場合は、認印で問題ありません。

その他必要な添付書類

会社の機関設計(取締役会を設置しているかなど)によって、追加で必要となる書類が異なります。代表的なものを表にまとめました。

書類名どのような場合に必要か備考
株主リストすべての場合に必要株主総会での決議内容が正当であることを証明するための書類です。
定款代表取締役の重任の場合で、代表取締役の選定を証する書類として互選書を添付する場合
代表取締役の選定を証する書類代表取締役の重任の場合株主総会議事録、取締役会議事録、互選書
印鑑証明書代表取締役の重任の場合で、「代表取締役の選定を証する書類」に取締役が実印を押印する場合代表取締役が代表印(法務局届出印)を押印する場合は不要です。
委任状司法書士など代理人に申請を依頼する場合会社から代理人への委任状を作成します。

自社の状況でどの書類が必要か不明な場合は、専門家である司法書士に相談するのが確実です。

ステップ3 管轄の法務局へ登記申請を行う

すべての必要書類が揃ったら、会社の本店所在地を管轄する法務局へ登記申請を行います。申請期限は、本来であれば株主総会の決議から2週間以内ですが、登記を忘れていた場合は、気づき次第、一日でも早く申請することが重要です。

申請方法は、主に以下の3つがあります。

  1. 窓口に持参して申請
    法務局の窓口へ直接書類を持参する方法です。書類に不備があればその場で指摘してもらえる可能性がありますが、受付時間内に法務局へ出向く必要があります。
  2. 郵送で申請
    必要書類一式を封筒に入れ、書留郵便で法務局へ郵送する方法です。法務局へ行く手間が省けます。
  3. オンラインで申請(登記・供託オンライン申請システム)
    法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、インターネット経由で申請する方法です。専用ソフトのインストールや電子署名が必要となり、初めての方には少しハードルが高いかもしれませんが、法務局へ出向く必要がなく、登録免許税もオンラインで納付可能です。

役員重任の登記忘れの対処にかかる費用内訳

役員重任の登記を忘れてしまった場合、手続きには必ず費用が発生します。慌てずに済むよう、どのような費用がいくらくらいかかるのかを事前に把握しておくことが重要です。費用は大きく分けて、法務局に納める「登録免許税」と、手続きを専門家に依頼する場合の「司法書士への報酬」の2つです。ここでは、それぞれの費用の詳細と相場について解説します。

必ず発生する登録免許税

登録免許税は、登記申請を行う際に国に納める税金です。役員重任登記を申請する際には、登記忘れの期間にかかわらず、必ず支払わなければなりません。税額は会社の資本金の額によって法律で定められています。

具体的な金額は以下の通りです。

会社の資本金の額登録免許税額
1億円以下の場合1万円
1億円を超える場合3万円

日本の大多数の中小企業は資本金が1億円以下であるため、多くの場合、登録免許税は1万円となります。この税金は、登記申請書に税額分の収入印紙を貼付して納付するか、オンライン申請をした場合は、電子納付も可能です。

専門家(司法書士)に依頼する場合の報酬相場

役員重任登記は自分で行うことも可能ですが、書類作成の正確性や手続きの手間を考えると、登記の専門家である司法書士に依頼するのが確実です。特に登記を忘れていた(登記懈怠)場合は、通常の登記手続きよりも対応が複雑になる可能性があるため、専門家への依頼をお勧めします。その際に発生するのが司法書士への報酬(手数料)です。

司法書士の報酬は事務所によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

依頼内容報酬の相場
役員重任登記2万円~5万円程度

役員重任の登記忘れに関するよくある質問

役員重任の登記を忘れてしまった方が抱きがちな、具体的な疑問についてQ&A形式で詳しく解説します。ペナルティに関する不安や、手続きそのものへの疑問を解消していきましょう。

過料の支払いを回避したり減額したりする方法はありますか?

登記懈怠による過料は、会社法第976条に基づく制裁であり、登記を怠った事実がある以上、原則として支払いを回避することはできません。

ただし、過料決定の謄本を受け取ってから1週間以内であれば「意義の申立て」をすることができます。意義の理由はなんでもよい訳ではなく、記載されている内容が事実と違っている場合や、登記懈怠の期間の計算が間違っている場合、その他特別の理由がある場合等に認められます。

過料の金額は、登記懈怠の期間、会社の状況、懈怠の理由などを総合的に考慮して、法務局からの通知を受けた裁判所が最終的に決定します。そのため、金額はケースバイケースであり、一律ではありませんが、役員重任の過料の相場は、2万円~10万円程度です。

過料を少しでも低く抑えるためにできる最善の策は、登記懈怠に気づいた時点で1日でも早く登記申請を行うことです。過料は懈怠期間が長くなれば、それに応じて高くなる傾向にありますので、迅速に対応することで、結果的に過料が低額に抑えられる可能性が高まります。

役員が同じでも重任登記はなぜ必要なのでしょうか?

「役員のメンバーが一人も変わらないのに、なぜ登記が必要なのか?」という疑問は非常によく聞かれます。たとえ役員が全員留任(重任)する場合でも、役員重任の登記は法律で定められた義務です。その理由は、主に以下の3点が挙げられます。

理由詳細な説明
役員の任期の存在株式会社の役員(取締役・監査役)には、法律で任期が定められています(原則として取締役は2年、監査役は4年。非公開会社は定款で最長10年まで伸長可能)。任期が満了すると、その役員は法律上、一度その地位を失います。
会社の意思決定の証明任期満了後も同じ人が役員を続ける(重任する)ためには、「引き続きこの人に経営を任せる」という会社の意思決定、すなわち株主総会での選任決議が改めて必要になります。これは会社の所有者である株主が、経営陣を信任する重要な機会です。重任登記は、この株主総会決議が適正に行われたことを証明する手続きでもあります。
第三者への公示と取引の安全会社の登記事項は、誰でも閲覧できる状態で公開(公示)されています。これは、金融機関や取引先などの第三者が、その会社の最新かつ正確な情報を確認し、安心して取引できるようにするためです。役員の任期が満了し、改めて選任されたという事実を登記簿に反映させることで、会社の信頼性を担保し、取引の安全を守る役割を果たしています。

まとめ

役員重任の登記忘れに気づいたら、速やかに対処することが最も重要です。放置すると最大100万円の過料や、最悪の場合「みなし解散」となるリスクがあります。本記事で解説した手順で株主総会を開き、必要書類を揃えて法務局へ申請しましょう。手続きが複雑な場合や長期間懈怠している場合は、司法書士への相談が確実です。今後は任期管理を徹底し、登記忘れを繰り返さない体制を整えることが肝心です。

ルフレ司法書士事務所では、会社の登記に関する様々な業務を扱っております。司法書士が、迅速丁寧にお客様の状況に合わせた最適なサポートを提供いたします。

会社の手続きでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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