もう迷わない!会社の解散をスムーズに進めるための登記手続きとポイント
会社を解散するには、法的な手続きが必要です。この手続きは順序を踏む必要があり、多くの書類の準備や法的な知識が必要となるため、初めての方にとっては大きな負担となるでしょう。本記事では、会社解散の登記手続きをスムーズに進めるためのポイントを、分かりやすく解説します。
会社の解散とは何かという基本的な定義から、解散の事由、具体的な手続きの流れ、必要書類、費用、期間、そしてよくある質問まで、網羅的に解説しています。この記事を読むことで、解散登記に必要な知識を網羅的に得ることができ、手続きをスムーズに進めるための準備を万全に行うことができます。また、司法書士などの専門家への相談の重要性についても触れているので、安心して手続きを進めるための判断材料として役立ちます。複雑な手続きに迷うことなく、会社の解散を適切に進め、不要なリスクやトラブルを回避するために、ぜひ本記事をご活用ください。
会社の解散とは何か?
会社の解散とは、法的な手続きを行い会社を消滅させることです。会社は、設立登記によって法人格を取得し活動を開始します。しかし、様々な理由により、会社はその活動を停止し、法人格を消滅させる必要が生じることがあります。
会社の解散の事由は、法律の定めがあり、その事由に該当した場合、2週間以内に、解散の登記をしなければいけません。ただし、この解散の登記をしただけでは、会社を消滅されることはできず、清算手続きを経て清算結了の登記をして最終的に消滅します。(税務署等に清算結了の届出を提出する必要もあります。)
会社の解散とは何か
会社が解散するということは、事業活動を停止し、法人としての存在を終わらせる手続きを意味します。会社は、人間と同じように「誕生(設立)」し、「活動(事業運営)」し、そして「死(消滅)」を迎えます。この「死」に向かうプロセスのスタート地点が「解散」です。解散後、会社は直ちに消滅するのではなく、清算手続きという「後始末」の期間を経て、最終的に消滅します。この清算手続きでは、会社の財産を整理し、債権者に債務を弁済し、残余財産を株主へ分配するなどの処理を行います。会社が解散した時点では、まだ法人格は残っており、清算手続きを行うための権利能力も維持されています。しかし、新たな事業活動を行うことはできません。
会社の解散の事由
会社が解散するには、様々な事由があります。会社法には解散事由が定められています。以下に株式会社と、合同会社等の持分会社の解散事由をまとめました。
1~5の事由は共通で、6と7が株式会社と持分会社で異なります。
株式会社 | 合同会社 |
---|---|
① 定款により定めた存続期間の満了 | 定款により定めた存続期間の満了 |
② 定款により定めた解散事由の発生 | 定款により定めた解散事由の発生 |
③ 合併により会社が消滅する場合 | 合併により会社が消滅する場合 |
④ 破産手続開始の決定 | 破産手続開始の決定 |
⑤ 裁判所による解散命令 | 裁判所による解散命令 |
⑥ 株主総会の決議 | 総社員の同意 |
⑦ みなし解散 | 社員が欠けたこと |
次にそれぞれの解散事由を説明します。
①定款により定めた存続期間の満了
会社設立時に定款で定めた存続期間が満了した場合、会社は解散します。
②定款により定めた解散事由の発生
定款に、特定の事由が発生した場合に会社が解散する旨を定めておくことができます。例えば、「一定の事業年度において、売上高が〇〇円を下回った場合」や「特定の事業から撤退した場合」などを解散事由として定めることができます。この事由が発生した場合、会社は解散します。
③合併により会社が消滅する場合
吸収合併や新設合併により、存続会社に事業が引き継がれ、吸収される側の会社は解散します。※この場合、清算手続は行わなくて問題ありません。
④破産手続開始の決定
会社が債務超過に陥り、支払不能の状態になった場合、裁判所は破産手続き開始の決定を下します。これにより、会社は強制的に解散します。破産管財人が選任され、会社の財産を換価し、債権者に配当します。
⑤裁判所による解散命令
株主が、株式会社の解散を裁判所に請求した場合や、公益に反する行為があった場合に、裁判所は会社の解散を命じることがあります。
⑥株主総会の決議
株式会社は株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)によって、会社はいつでも解散することができます。会社の経営状況が悪化したり、事業継続が困難になった場合など、株主の合意に基づいて解散することができます。最も一般的な解散事由です。
⑦みなし解散
最後に登記があった日から12年が経過した株式会社であって、その後法務大臣による官報公告後2か月以内に、登記や事業を廃止していない旨の届出がない場合、解散したものとみなされます。
⑥総社員の同意
合同会社は総社員の同意によって、いつでも解散することができます。合同会社の解散事由としては、最も多い解散事由です。
⑦社員が欠けたこと
合同会社の社員が1人もいなくなった場合は、解散することになります。
会社解散の登記手続きの流れ
会社を解散するには、法的な手続きが必要です。株主総会の決議により解散することになった場合を例に、以下の流れを把握しておきましょう。
解散決議
会社解散の最初のステップは、株主総会での解散決議です。解散決議の際に、清算人の選任もします。
株主総会における決議方法
株主総会の特別決議(原則として、議決権を行使できる株主の過半数の株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成することで成立)で解散決議を行います。
議事録の作成
株主総会での決議内容を記録した議事録は、解散登記の際に必要となる重要な書類です。決議の日時、場所、出席した役員の名前、議決権の数、議事の内容、決議の結果などを正確に記録しましょう。解散の登記をするときは、この株主総会議事録の他に、株主リストが必要になりますので、併せて作成します。
解散及び清算人の選任の登記の申請
解散決議後、2週間以内に解散と清算人の選任の登記申請を行う必要があり、通常は同時に申請します。なお、監査役設置会社の場合は、監査役の退任と監査役設置会社の定めの廃止の申請も必要になります。申請に必要な書類を揃え、法務局へ提出します。
必要書類
- 登記申請書
- 定款
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 委任状(司法書士が申請する場合)
登録免許税
解散と清算人の選任の登記には、登録免許税として3万9000円が必要です。監査役設置会社の場合は、7万9000円or9万9000円が必要になります。こちらはPay-easy(ペイジー)又は収入印紙で納付します。
申請窓口
会社の本店所在地を管轄する法務局が申請窓口となります。
官報公告・知れてる債権者への個別催告
解散決議の後、遅滞なく官報に解散の公告をする必要があります。スムーズに手続きを進めるために、官報公告の申込みを解散決議に前にすることも検討しましょう。
事前に申し込みすることによって、最短で解散決議の翌日に官報公告を掲載することも可能です。これは、債権者に対して解散を周知させるための重要な手続きになりますので、知れてる債権者には、個別に会社の解散を知らせる必要があります。
官報の申し込み方法
こちらから申し込み可能です。
費用
官報公告の費用は、公告内容の文字数によって異なりますが、4万円前後はかかってくるかと思います。
清算手続き
会社解散後、清算手続きを行います。清算人は、会社の財産を整理し、債権者に債務を弁済し、残余財産を株主に分配します。
清算人の選任と役割
清算人は、株主総会で選任されます。代表取締役が清算人となる場合もあります。清算人は、会社の財産の管理、債権の取立て、債務の弁済、残余財産の分配など、清算に関する一切の業務を行います。
債権者への通知と債務の弁済
清算人は、既知の債権者には個別に通知し、未知の債権者に対しては官報に公告することで、債権の申出を催促します。債権の調査を行い、債務を弁済していきます。
残余財産の分配
債務の弁済が完了した後、残余財産があれば、株主に分配します。
清算完了後の決算報告
清算人は清算完了後、決算報告を作成し、株主総会の承認を受けなければなりません。
清算結了登記
清算手続きが完了したら、清算結了登記を申請しますが、最短でも官報公告の翌日から2か月経過後の日付ではないと登記申請できません。
必要書類
- 登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 委任状(司法書士が申請する場合)
登録免許税
清算結了登記には、登録免許税として2,000円が必要です。Pay-easy(ペイジー)又は収入印紙で納付します。
申請窓口
会社の本店所在地を管轄する法務局が申請窓口となります。
会社解散に関する費用と期間
会社を解散するには、様々な費用と一定の期間が必要となります。費用の内訳や期間の目安を把握することで、スムーズな解散手続きを進めることができます。想定外の出費や手続きの遅延を防ぐためにも、事前にしっかりと確認しておきましょう。
費用の内訳
会社解散にかかる費用は、大きく分けて以下の項目に分類されます。
費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
---|---|---|
登録免許税 | 4万1000円(監査役設置会社の場合は、8万1000円or10万1000円) ※株式会社・合同会社で金額に違いはありません。 | 内訳:解散(3万円)、清算人の選任(9000円)、清算結了(2000円)、監査役の退任(1万円or3万円)、監査役設置会社の定め廃止(3万円) |
官報公告料 | 4万円前後 | 詳しくはこちらをご覧ください。 |
専門家費用(司法書士・税理士等) | 司法書士報酬:10万円前後 税理士報酬:10万円~ | 手続きの依頼内容によって変動します。 |
債務弁済費用 | 会社の負債額による | 会社が負っている債務を弁済するために必要な費用です。 |
その他費用(郵送費、交通費等) | 数千円~数万円 | 必要に応じて発生します。 |
期間の目安
会社解散にかかる期間は、会社の規模や状況によって大きく異なります。最低でも2ヶ月以上、清算手続きに時間がかかれば、その分遅くなりますので、1年以上かかることもあります。主な手続きは以下の通りです。
手続き | 期間の目安 | 備考 |
---|---|---|
① 株主総会決議 | 1日~数週間 | 早ければ解散を決めた当日に決議することも可能です。 |
② 解散登記 | 1週間~2週間 | 法務局の審査期間を含みます。 |
③ 官報公告(解散) | 1週間~2週間 | 官報掲載の申請手続きから掲載されるまでの期間 |
④ 清算手続き(債権者への個別の通知、債務弁済等) | 2ヶ月~ | 債権者への通知期間として、官報公告日から2ヶ月以上の期間を設ける必要があります。 |
⑤ 清算結了登記 | 1週間~2週間 | 法務局の審査期間を含みます。 |
上記はあくまで目安であり、実際には会社の状況によって前後する可能性があります。例えば、債権者との交渉が難航したり、予期せぬ問題が発生したりした場合には、さらに時間を要することもあります。余裕を持ったスケジュールを立て、専門家と相談しながら進めることが重要です。
これらの費用と期間を考慮し、適切な準備と計画を立てることで、会社解散をスムーズに進めることができます。不明な点や不安な点があれば、司法書士に相談することをお勧めします。
会社解散と会社登記のよくある質問
会社を解散する際の登記手続きについて、よくある質問とその回答をまとめました。手続きに関する疑問を解消し、スムーズな解散手続きを進めるためにお役立てください。
解散登記は自分でもできますか?
はい、自分でも行うことができます。法務局に必要書類を提出することで手続きを進めることができます。ただし、解散の手続きはいくつかの手順を踏む必要があり、初めての方が行うには難易度が高いです。そのため、司法書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。
司法書士に依頼するメリットは?
司法書士に依頼する主なメリットは以下の通りです。
- 手続きの正確性向上:専門知識を持つ司法書士が手続きを行うため、書類の不備や手続きのミスを減らすことができます。
- 時間と労力の節約:複雑な手続きを代行してくれるため、貴重な時間と労力を他に充てることができます。時間をかけずにスムーズに会社を解散したい場合は、依頼した方が良いと思います。
- トラブル回避:法的な問題が発生しないように、適切なアドバイスと対応を受けられます。
特に、会社規模が大きく手続きが複雑な場合は、司法書士に依頼するメリットが大きくなります。費用対効果を考慮し、ご自身の状況に合わせて判断しましょう。
会社解散にかかる費用はどれくらいですか?
会社解散にかかる費用は、こちらをご覧ください。
会社解散後、事業を再開することはできますか?
解散の登記をした後でも、清算結了登記をするまでであれば、事業を再開することは可能です。この場合、会社継続の登記が必要になります。登録免許税は4万円~(機関設計による)です。
清算人は誰を選任すればいい?
清算人は、会社の財産を整理し、債権者への弁済、残余財産の分配などを行う重要な役割を担いますが、特に資格や要件はありませんので、誰でも選任することができます。
実務上、解散前の取締役が清算人になることが多いです。選定方法ですが、定款に記載されていれば、それに従うことになりますが、株式会社で解散決議をした際に一緒に清算人を決めることが多いです。
清算人の選任は、会社解散の手続きにおいて非常に重要な要素です。会社の規模や状況、清算業務の内容などを考慮し、適切な人材を選任することが、スムーズな解散手続きにつながります。不明な点があれば、専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
会社を解散するには、正しい順序で手続きを行う必要があります。この記事では、会社の解散とは何かから始まり、解散の事由、登記手続きの流れ、費用と期間、よくある質問などを解説しました。スムーズな解散のためには、正しい手続きと適切なスケジュール管理が重要です。
解散登記は、株主総会の決議に基づき行うことが多いです。決議後は速やかに解散登記を申請し、官報で公告する必要があります。 その後、清算手続きに入り、債権者への通知や債務弁済、残余財産の分配を行います。最後に清算結了登記を申請することで、会社は完全に消滅します。
これらの手続きには、登録免許税や官報公告料などの費用が発生します。また、手続きが遅滞すると過料が発生する可能性もあるため、注意が必要です。専門家である司法書士や税理士に相談することで、手続きの負担を軽減し、スムーズな解散を実現できるでしょう。時間と費用を節約し、リスクを回避するためにも、専門家への相談は有効な手段です。早めの準備と行動が、円滑な会社解散へと繋がります。
ルフレ司法書士事務所では、設立登記をはじめ、役員変更など、会社の登記に関する様々な業務を扱っております。司法書士が、迅速丁寧にお客様の状況に合わせた最適なサポートを提供いたします。
会社の手続きでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。