認知症対策にも!財産管理契約が必要なケースや手続き・費用・注意点
財産管理契約は、ご自身の財産管理に不安を感じている方が、判断能力が低下する前であっても利用できる制度です。本記事では、認知症対策として任意後見契約を検討している方が、財産管理契約も必要かどうかを確認するために、財産管理契約が必要なケースや、手続き、費用、注意点まで、分かりやすく徹底解説します。
財産管理契約とは
財産管理契約とは、ご本人が判断能力がある間の財産管理について、第三者に委任する契約です。
任意後見制度は、将来、ご自身の判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ後見人となってくれる人と契約を締結しておく制度です。この任意後見契約は、契約締結後すぐに効力が発生するわけではありません。ご本人の判断能力が低下した段階で、任意後見人の仕事が始まり、ご本人の財産管理等を行います。
ご本人の判断能力が低下してからの財産管理以外にも、任意後見契約を締結してから、ご本人の判断能力が低下するまでの間も、財産管理をお願いしたいというニーズはあります。この場合、財産管理契約を締結して、受任者が財産管理を行います。
このように、任意後見契約は、委任者が判断能力が低下した後に、あらかじめ指定した任意後見人が家庭裁判所の手続きを経て、後見人として身上監護や財産管理を行う契約です。一方、財産管理契約は、委任者が判断能力が健在なうちに、受任者に財産の管理を委託する契約です。つまり、任意後見契約は将来の成年後見制度利用を見据えた契約であり、財産管理契約は現在の財産管理を委託する契約です。
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財産管理契約が必要なケース
財産管理契約は、次のようなケースで検討されます。
- 病気やケガ、高齢等の理由で外出が難しくなった場合
- 老人ホームや高齢者向け住宅などへ入居する場合
- ご家族が親の財産を管理しているが、他のご家族から不信に思われてしまった場合
財産管理契約の手続きと費用
財産管理契約を締結するには、一定の手続きが必要となります。また、司法書士への依頼や公正証書の作成には費用が発生します。ここでは、契約締結までの流れ、費用の相場について詳しく解説します。
財産管理契約の手続きの流れ
司法書士と財産管理契約をした場合の、手続きの流れは下記のようになります。
1 財産管理契約の内容を決める(管理する財産の種類や、公共料金や税金の支払い、その他のご要望事項)
⇩
2 公正証書を作成する(任意後見契約に財産管理契約の内容を盛り込むことで費用が節約できます)
財産管理契約の料金体系
司法書士による財産管理契約の費用は、下記のようになります。
初期費用(公正証書作成費用)
初期費用として、財産管理契約を公正証書で作成する費用がかかります。司法書士報酬の相場が3万円~、公証人手数料が1万~2万円で、合計4万円~になります。
月額料金
月額料金の相場は、2万円~(別途、交通費等の実費が発生)です。管理する財産が多くなれば、その分費用も高くなります。
財産管理契約の注意点
財産管理契約を締結する際には、様々な注意点が存在します。契約内容をしっかりと理解し、将来のトラブルを未然に防ぐために、以下の点に注意しましょう。
契約内容の確認
契約書は、委任者と受任者の権利義務を定める重要な書類です。契約内容を理解せずに署名することは避け、不明点があれば専門家に相談しましょう。特に、以下の項目は重点的に確認することが重要です。
委任事項の範囲
財産管理の範囲を明確に定めることが重要です。具体的にどのような行為を委任するのか、例えば、預貯金の管理、不動産の管理、税金の納付、公共料金の支払いなど、詳細に記載する必要があります。また、どこまで代理権を与えるかも明確にしておくべきです。日常生活における細かな買い物まで委任するのか、それとも大きな財産の処分に限るのかなど、範囲を明確にしましょう。曖昧な表現は避け、具体的な範囲を明記することで、後々のトラブルを防止できます。「その他」のような包括的な表現も、できる限り避け、具体的に記載することが重要です。
報酬の明確化
受任者への報酬額や支払い方法、費用の負担についても明確に定めておく必要があります。時間制なのか、固定額なのか、消費税込みなのか等、詳細に記載し、誤解が生じないようにしましょう。また、契約期間中の報酬変更についても、どのような場合に変更されるのかを予め定めておくことが大切です。
解約方法の確認
契約期間や解約方法、解約時の費用負担についても確認が必要です。委任者・受任者のどちらからでも解約できるのか、解約する場合の手続きはどうすればいいのか、解約に費用は発生するのかなどを明確にしておきましょう。
取消権は付与できない
財産管理契約の受任者には、取消権がありませんので、ご本人が間違って高額な物を買ってしまったことを、財産管理契約の受任者が後で気づいた場合でも、取り消すことができません。
まとめ
本記事では、財産管理契約が必要なケースや手続き、費用、注意点まで、解説しました。
財産管理契約は、将来の不安を軽減し、安心して生活を送るための有効な手段です。この記事が、財産管理契約について理解を深め、適切な選択をするための一助となれば幸いです。
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