商号変更の登記手続きを徹底解説!必要書類から費用、注意点まで

商号変更 登記

有名企業の社名変更に関するニュースやプレスリリースを見ることは多いと思いますが、この社名変更には登記手続きが必要になります。

本記事では、商号変更の必要性から具体的な登記手続きの方法、必要書類、費用、さらによくある質問までを徹底解説します。これを読むことで商号変更に関する疑問を解決し、スムーズに手続きを進めるための知識を得ることができます。

目次

商号変更とは

商号変更とは、会社や法人が現在使用している名前(社名)を別の名前に変更することを指します。商号はその組織の「顔」であり、取引先や顧客からの認識にも直結する重要な要素です。法的には「商号変更」といいますが、いわゆる「社名変更」のことです。

商号変更を行う際には、単なる名称の変更だけでなく、法律に基づいた手続きである「商号変更登記」を行う必要があります。

商号の定義

商号とは、会社法第6条に基づき、法人がその業務を行うにあたって自らを示す名称を指します。商号は、すべての法人が定款や登記簿に記載する必須事項であり、会社の外部的な信用を担保する重要な役割を果たします。

商号には、株式会社や合同会社といった法人形態を示す「会社の種類」を含める必要があります。たとえば、「株式会社〇〇」や「〇〇合同会社」といった形式が必須です。また、商号には漢字、ひらがな、カタカナだけでなく、ローマ字や一部記号も使用可能です。ただし、法律で使用が認められていない文字や記号、意味不明な記述は使用できない点に注意が必要です。

商号変更の必要性

商号変更を行う理由は多岐にわたりますが、主に以下のようなケースで必要性が生じることがあります。

ケース具体例
事業内容の変更新規事業の追加や撤退、業界の変化に対応するために商号を変更するケース。
合併や買収複数の会社が合併した際、新しい商号を採用する場合。
ブランドの刷新イメージ戦略の一環として社名を変更し、新しいブランドコンセプトを訴求するケース。
消費者への混同防止商号が似た会社の存在により、混同が生じる可能性を排除するため。

商号変更を正しく行うことで、新たな価値を顧客に提供しやすくなるほか、企業の成長や信頼性向上にもつながります。一方、この手続きは法的な手順が伴うため、専門家のアドバイスを受けることも重要です。

新しい商号の決定

商号を変更する際には、新しい商号を決定することが第一歩となります。この段階では、以下の点に注意する必要があります。

類似商号の調査方法

会社法では、同じ住所で同一の商号を使用することは認められていません。また、同じ住所に同じ商号の会社がなかったとしても、似た名前の会社が存在すると色々と支障がでてきることもあります。

不正競争防止法では、他の会社と誤認されるような商号を使用することは禁止されています。不正の目的がなくても、著名な商号と同一または類似する商号を使用した場合、損害賠償請求や使用差止請求を行うことができます。また、他の人が商標登録している商号を使用した場合も、損害賠償請求や差止請求の対象となります。そのため、新しい商号を決定する際には、慎重に既存の商号と同一の商号ではないか、類似していないかを確認する必要があります。

調査方法として、次の手段が考えられます。

  • 商号調査を法務局で行う
  • 法人番号公表サイトを利用する
  • インターネットで既存企業名を検索する
  • 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で商標を調査する

商号調査を法務局で行う

法務局の登記・供託オンライン申請システム(利用時間 平日 午前8時30分から午後9時)で同じ商号の会社や類似する会社がないか確認します。

【手順】
     申請者情報登録
        ⇩
       ログイン
        ⇩
  「各種サービス」→「商号調査」

法人番号公表サイトを利用する

国税庁の法人番号公表サイトで検索することもできます。法務局のシステムと違い、申請者情報の登録をすることなく利用できるので調査が簡単です。

インターネットで既存企業名を検索する

一番簡単な方法としては、インターネットで検索して調べる方法です。ただし、全ての会社が検索で表示されるわけではありませんので、漏れがでてくる可能性はあります。

特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で商標を調査する

商標登録した商号と同じ商号に変更登記をすると、商標権の侵害が生じる可能性があります。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で同じ商号の会社や類似する会社がないか確認します。検索方法についてはこちらをご覧ください。特許庁:商標を検索してみましょう

商号に使用できる文字

商号に含めることができる文字や記号には一定の制限があります。例えば、日本語の漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(大文字・小文字)、アラビア数字、記号(&・’(アンド)や-(ハイフン)など)が使用可能です。

一方で、ギリシャ文字や絵文字、中国の簡体字などは商号に使用できません。また、「銀行」など特定の業種を連想させる単語は、適法にその事業を行う会社でなければ使用することはできません。

商号変更登記の必要書類

株式会社(及び有限会社)の場合

株式会社(及び有限会社)が商号変更登記を申請する際には、以下の書類を準備する必要があります。

必要書類内容
株主総会議事録商号変更が株主総会で承認されたことを証明。議事録に社名を記載します。
株主リスト株主構成を一覧にまとめた書類。
登記申請書法務局へ提出する申請書で、フォーマットは法務局のホームページから(商号・目的の変更、本店移転)からダウンロードできます。
印鑑届出書新しい商号の印鑑を登録するための書類。こちらの法務局のホームページからダウンロードできます。通常、商号変更の登記と同時に印鑑届出書も提出しますが、必須ではないため、後で印鑑届出書を提出することもできます。
委任状司法書士に登記手続きを委任する場合

合同会社等の持分会社の場合

合同会社等の持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)の場合は以下の書類の提出が必要です。

必要書類内容
総社員の同意書商号変更について社員全員が承認した同意書。
登記申請書法務局へ提出する申請書で、フォーマットは法務局のホームページから(商号・目的の変更、本店移転)からダウンロードできます。
印鑑届出書新しい商号の印鑑を登録するための書類。こちらの法務局のホームページからダウンロードできます。通常、商号変更の登記と同時に印鑑届出書も提出しますが、必須ではないため、後で印鑑届出書を提出することもできます。
委任状司法書士に登記手続きを委任する場合

NPO法人の場合

NPO法人の場合は以下の書類の提出が必要です。

必要書類内容
社員総会議事録名称変更が社員総会で承認されたことを証明。議事録に社名を記載します。
認証書NPO法人の場合、名称の変更に所轄庁の認証が必要です。
定款名称変更後の定款を添付します。
登記申請書法務局へ提出する申請書で、フォーマットは法務局のホームページから(商号・目的の変更、本店移転)からダウンロードできます。
印鑑届出書新しい商号の印鑑を登録するための書類。こちらの法務局のホームページからダウンロードできます。通常、商号変更の登記と同時に印鑑届出書も提出しますが、必須ではないため、後で印鑑届出書を提出することもできます。
委任状司法書士に登記手続きを委任する場合

一般社団法人・一般財団法人の場合

一般社団法人・一般財団法人の場合は以下の書類の提出が必要です。

必要書類内容
社員総会(評議員会)議事録名称変更が社員総会(一般財団法人の場合、評議員会)で承認されたことを証明。議事録に社名を記載します。
公益認定書謄本一般社団法人・一般財団法人から公益社団法人・公益財団法人になる場合に必要です。
登記申請書法務局へ提出する申請書で、フォーマットは法務局のホームページから(一般社団法人 一般財団法人)からダウンロードできます。
印鑑届出書新しい商号の印鑑を登録するための書類。こちらの法務局のホームページからダウンロードできます。通常、商号変更の登記と同時に印鑑届出書も提出しますが、必須ではないため、後で印鑑届出書を提出することもできます。
委任状司法書士に登記手続きを委任する場合

商号変更の登記手続き

申請方法

作成した申請書と必要書類を、会社の本店所在地を管轄する法務局に提出します。申請は、登記・供託オンライン申請システムを使用してオンラインで申請するか、紙の申請書を会社の所在地を管轄する法務局に提出します。紙の申請書の場合、郵送(実務上レターパックを使用することが多いです。添付書面の原本還付を希望する場合、その分のレターパックも同封します)での申請も可能ですが、窓口で直接申請することもできます。電子申請の場合は、マイナンバーカードに格納されている電子証明書等が必要になります。

各申請方法にはメリット・デメリットがありますので、会社の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。登記手続きに慣れている場合は、オンラインで電子申請して、必要に応じて添付書面のみを郵送で送るのが楽だと思いますが、初めて手続きをする方は、紙で申請書を作成して、窓口に提出するか、郵送で送った方が難易度は低いです。

それぞれの手順やメリット・デメリットを詳しく解説します。

紙による申請

従来から行われている申請方法です。必要書類を揃えて、管轄の法務局へ直接持参するか、郵送で提出します。

紙による申請の手順

  1. 申請書類を作成・印刷する
  2. 必要書類を収集する
  3. 登録免許税を収入印紙で納付する(収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼ります)
  4. 法務局へ持参または郵送で提出する
  5. 申請内容の審査
  6. 登記完了(登記簿謄本の交付)

紙による申請のメリット・デメリット

メリットデメリット
インターネット環境が不要法務局へ行く必要がある、または郵送の手間がかかる
はじめて登記申請をする人にはオンラインよりも難易度が低め書類の不備があった場合、補正で法務局まで出向く必要がある。

電子申請

インターネットを利用して、登記・供託オンライン申請システムで申請を行う方法です。法務局へ行く必要がなく、月曜日から金曜日までの8時30分から21時まで(国民の祝日・休日、12月29日から1月3日までの年末年始を除く。)いつでも手続きが可能です。電子署名が必要となります。

電子申請の手順

  1. 電子証明書の取得(マイナンバーカードを使う場合は取得不要)
  2. 申請書類の作成(登記・供託オンライン申請システムで作成する)
  3. 申請
  4. 添付書面を郵送で法務局に送る
  5. 登録免許税のオンライン納付又は収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼って添付書面と一緒に郵便で送る
  6. 申請内容の審査
  7. 登記完了(登記簿謄本の交付)

電子申請に必要なもの

  • パソコン
  • インターネット環境
  • 電子証明書
  • PDF作成ソフト
  • ICカードリーダー

電子申請のメリット・デメリット

メリットデメリット
平日8時30分から21時までの時間いつでも申請可能インターネット環境と電子証明書が必要
法務局へ行く必要がない電子申請システムの操作に慣れが必要

申請方法の選択

時間や手間をなるべく省きたい場合は電子申請、手続きに慣れていない又はインターネット環境がない場合は紙による申請がおすすめです。

申請先

商号変更登記の申請は「会社の本店所在地を管轄する法務局」に対して行います。管轄法務局を調べるには、法務局のホームページを参照するか、「会社 登記管轄 ○○」のように、本店所在地を入れてインターネットで検索すると良いと思います。不動産登記と会社の登記では管轄が違う場合があります。申請先を間違えると、申請が却下されますので、注意が必要です。

登記完了

不動産登記と違い、法務局の手続きが完了しても登記を完了したことを証明する登記完了証や登記識別情報のような権利証は発行されません。

変更後の登記内容を確認したい場合は、別途、登記簿謄本(登記事項証明書)を窓口又は登記・供託オンライン申請システムで請求するか、登記情報提供サービスで確認します。費用は登記簿謄本の場合、480円(郵送で送ってもらう場合は500円)、登記情報サービスで閲覧する場合、331円です。

登記完了までの期間は、法務局の混雑状況にもよりますが、通常1週間から2週間程度です。通常より早く完了する場合もあります。

登記完了後には、取引先や金融機関などへの連絡、ウェブサイトの更新、名刺の変更など、必要な手続きを行いましょう。

費用

項目金額
登録免許税30,000円
郵送費・交通費1,000~2,000円程度
司法書士費用 ※司法書士に依頼する場合相場20,000円~40,000円

商号変更に関するよくある質問

登記の期限はありますか?

会社登記変更には、法令で定められた期限があります。2週間の期限内に手続きを行わないと、過料の対象となる可能性がありますので、注意が必要です。

これらの期限は、変更の事実が発生した日から起算されます。商号変更の決議日(議事録等に商号変更の効力発生日の記載がある場合は、その日)から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。期限を過ぎてしまうと、100万円以下の過料が科せられる可能性があります。

商号変更登記にかかる期間は?

商号変更登記の手続きにかかる期間は、法務局に申請してから、手続き完了まで通常1~2週間程度です。ただし、法務局の混雑状況により時間が延びることがありますので、余裕を持ったスケジュールを立てることをお勧めします。また、書類に不備があった場合は、修正の時間が生じるため、その分の完了まで期間がかかります。

提出した登記申請に不備があるとどうなりますか?

登記申請書類に不備があると、法務局から補正を求められます。補正が完了するまで登記は完了しませんので、手続きが遅延し、ビジネスに影響が出る可能性があります。

よくある不備の例

  • 必要書類の不足
  • 書類の記載ミス
  • 添付書類の不備
  • 収入印紙の不足

これらの不備を避けるためには、事前に必要書類をしっかりと確認し、正確に記入することが重要です。また、法務局のウェブサイトで登記申請書の書き方や必要書類を確認することも有効です。

登記簿謄本はどこで取得できますか?

登記簿謄本は、最寄りの法務局の窓口で取得することができます。また、オンライン(登記・供託オンライン申請システム)での取得も可能です。
登記簿が必要なければ、登記情報提供サービスでインターネットを通じて登記内容を閲覧できます。このサービスを利用するには、事前にユーザー登録が必要です。
費用は登記簿謄本の場合、480円(郵送で送ってもらう場合は500円)、登記情報サービスで閲覧する場合、331円です。

商号変更をした場合、税務署には届出が必要ですか?

商号変更をした場合、税務署への届出も必要になります。「異動届出書」を提出することが義務付けられています。また、税務署以外にも、社会保険事務所や都道府県税事務所、市町村役場などに対しても情報の変更届出を行う必要があります。

まとめ

商号変更登記は、重要な手続きであり、正確かつ迅速に進めることが求められます。手続きには必要書類の準備、登録免許税の支払い、類似商号の確認など、事前の準備が欠かせません。また、登記完了後の税務署等への届出や、取引先への通知、名刺やホームページの更新などの手続きも必要です。本記事を参考に、必要な流れを正確に理解して円滑な商号変更の手続きを行ってください。

ルフレ司法書士事務所では、設立登記をはじめ、役員変更など、会社の登記に関する様々な業務を扱っております。司法書士が、迅速丁寧にお客様の状況に合わせた最適なサポートを提供いたします。

会社の手続きでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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