【令和7年4月一部改正】本店移転登記の必要書類を徹底解説!司法書士が教える手続き方法

「本店移転登記」は、法人の重要な手続きの一つです。この記事では、本店移転登記に必要な書類を、管轄内外のケース別に司法書士が徹底解説します。登記申請書の作成から法務局への申請方法、さらには期限や登録免許税まで、手続き全体を網羅的に解説。この記事を読めば、複雑な本店移転登記をスムーズに進め、過料などのリスクを回避できるでしょう。
本店移転登記とは?
会社の本店移転登記とは、会社の事業活動の中心となる本店所在地を変更した際に、その変更内容を法務局に届け出て、会社の商業登記簿に反映させる手続きのことです。この登記は、会社の重要な基本情報である本店所在地を最新の状態に保ち、公にすることで、取引の安全性や会社の信用を確保するために不可欠です。
本店移転登記の義務と重要性
会社法では、会社の本店所在地に変更があった場合、その変更から2週間以内に本店移転登記を行うことが義務付けられています。この義務を怠ると、会社法第976条に基づき、代表者個人に対して100万円以下の過料が科される可能性があります。
本店移転登記の重要性は、単に法的な義務を果たすことにとどまりません。商業登記簿に記載された本店所在地は、取引先、金融機関、その他の関係機関が会社を特定する際の重要な情報となります。最新かつ正確な情報を公示することで、会社の信用を維持し、円滑な事業運営を可能にします。また、登記情報は誰でも閲覧可能であるため、取引の安全性を確保する上でも極めて重要な役割を担っています。
管轄内外で変わる本店移転登記手続きの全体像
本店移転登記の手続きは、移転前後の本店所在地が同じ法務局の管轄区域内であるか、異なる法務局の管轄区域へ移転するかによって、その手続きの複雑さや必要書類が大きく異なります。この違いを理解することが、円滑な登記申請の第一歩となります。
区分 | 定義 | 主な手続きの特徴 | 登録免許税 |
---|---|---|---|
管轄内移転登記 | 現在の本店所在地と同じ法務局の管轄区域内で本店を移転する場合。 |
| 3万円 |
管轄外移転登記 | 現在の本店所在地と異なる法務局の管轄区域へ本店を移転する場合。 |
| 旧所在地管轄法務局で3万円、新所在地管轄法務局で3万円(合計6万円) |
管轄内移転登記の概要
管轄内移転登記とは、会社の本店を、現在の本店所在地を管轄している法務局の区域内で移転する場合を指します。例えば、東京都千代田区内で本店を移転するケースがこれに該当します。この場合、登記申請は現在の本店所在地を管轄する法務局に対してのみ行います。登記申請書の提出先が1か所であるため、手続きは比較的シンプルに進められます。
この登記では、主に定款に記載された本店所在地の変更(最小行政区画までの記載の場合は不要)や、登記簿上の本店所在地の変更が行われます。定款に記載された本店所在地の変更が必要になる場合は、株主総会議事録と株主リストが必要になりますが、定款変更が不要な場合は、必要書類が取締役会議事録(又は取締役の過半数の一致を証する書面)のみになるため、比較的簡単に書類を揃えることができます。
管轄外移転登記の概要
管轄外移転登記とは、会社の本店を、現在の本店所在地を管轄する法務局の区域外へ移転する場合を指します。例えば、東京都千代田区から東京都品川区へ本店を移転するケースがこれに該当します。この場合、現在の本店所在地を管轄する法務局(旧所在地管轄法務局)と、移転後の本店所在地を管轄する法務局(新所在地管轄法務局)の2か所に登記申請を行う必要があります。
注意点としては、新所在地管轄法務局へ提出する申請は、旧所在地管轄法務局を経由する必要があり、かつ旧所在地管轄法務局の申請と同時に行う必要があります。このため、必要書類が増え、手続きも複雑になる傾向があります。また、登録免許税も旧所在地と新所在地の両方で発生するため、合計で6万円が必要となります。
本店移転登記の必要書類をケース別に徹底解説
本店移転登記の手続きを進める上で、最も重要なのが必要書類の準備です。登記の種別(管轄内移転か管轄外移転か)によって、必要となる書類は異なります。ここでは、ケース別に必要な書類を網羅的に解説し、それぞれの書類の役割や作成・取得のポイントを詳しく説明します。
①管轄内移転登記で定款変更が不要な場合
定款に本店の所在地として最小行政区画までを規定している場合であって、その最小行政区画内において本店を移転するときには、定款変更が必要ない為、提出書類が一番少なくなります。
・登記申請書・・登記の申請方法には、オンライン申請と書面申請の2つがあります。
①オンライン申請の場合・・申請用総合ソフトの操作手順(手順はこちら)に従い、申請書情報を作成します。
②書面申請の場合・・こちらから申請書がダウンロードできます。
・取締役会議事録(又は取締役の過半数の一致を証する書面)
・委任状・・司法書士へ登記申請を委任した場合に必要
②管轄内移転登記で定款変更が必要な場合
定款に本店所在地が番地まで具体的に記載されている会社の場合、本店移転によって定款の変更が必要となります。その為、上記に加えて株主総会議事録と株主リストが必要になります。
・登記申請書・・登記の申請方法には、オンライン申請と書面申請の2つがあります。
①オンライン申請の場合・・申請用総合ソフトの操作手順(手順はこちら)に従い、申請書情報を作成します。
②書面申請の場合・・こちらから申請書がダウンロードできます。
・株主総会議事録
・株主リスト
・取締役会議事録(又は取締役の過半数の一致を証する書面)
・委任状・・司法書士へ登記申請を委任した場合に必要
③管轄外移転登記(令和7年4月一部改正)
異なる法務局の管轄へ本店を移転する場合(例:東京都千代田区から大阪府大阪市への移転)は、旧所在地と新所在地の両方の法務局で登記手続きが必要となるため、管轄内移転に比べて必要書類が多くなります。共通書類に加え、以下の書類が必要となります。
【旧所在地の法務局への提出する必要書類】
・登記申請書・・登記の申請方法には、オンライン申請と書面申請の2つがあります。
①オンライン申請の場合・・申請用総合ソフトの操作手順(手順はこちら)に従い、申請書情報を作成します。
②書面申請の場合・・こちらから申請書がダウンロードできます。
・株主総会議事録
・株主リスト
・取締役会議事録(又は取締役の過半数の一致を証する書面)
・委任状・・司法書士へ登記申請を委任した場合に必要
【新所在地の法務局への提出する必要書類】
・登記申請書・・登記の申請方法には、オンライン申請と書面申請の2つがあります。
①オンライン申請の場合・・申請用総合ソフトの操作手順(手順はこちら)に従い、申請書情報を作成します。
②書面申請の場合・・こちらから申請書がダウンロードできます。
・委任状・・司法書士へ登記申請を委任した場合に必要
・印鑑カード交付申請書・・こちらから申請書がダウンロードできます。
【改正】本店を管轄登記所外に移転する際の印鑑届書の提出が不要になりました。
令和7年4月21日から、新所在地を管轄する登記所への印鑑届書の提出が不要になりました。
なお、印鑑カードは引き継がれない為、従来通り印鑑カード交付申請書の提出が必要になります。
詳しくはこちらの法務省のHPに記載があります。
本店移転登記手続きの具体的な流れと申請方法
本店移転登記は、会社の重要な情報である本店所在地を変更する法的な手続きです。この章では、本店移転登記の準備から申請、そして法務局への具体的な申請方法までを詳しく解説します。
本店移転登記の準備から申請までのステップ
本店移転登記は、適切な準備と手順を踏むことでスムーズに進めることができます。主なステップは以下の通りです。
- 本店移転の決定: 株主総会や取締役会(または取締役の過半数の一致)で本店移転を決議し、移転日を定めます。この際、定款変更の要否も確認します。
- 必要書類の収集・作成: 前章で解説した登記申請書、株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録などの必要書類を準備します。
- 登録免許税の準備: 収入印紙で登録免許税を納付する場合は、収入印紙を準備します。(管轄内本店移転の場合は3万円、管轄外本店移転の場合は6万円)
- 法務局への申請: 準備した書類一式を管轄の法務局へ提出します。管轄外移転の場合は、新本店所在地の管轄の法務局へ提出する申請書も旧本店所在地の管轄の法務局を経由して申請する(同時に旧本店所在地の管轄の法務局へ申請書2通を提出)必要があります。
- 登記完了後の確認: 登記が完了したことを確認し、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を取得します。
- 関連機関への届出: 登記完了後、税務署、年金事務所、都道府県・市区町村など、関係機関への変更届出を行います。
これらのステップを計画的に進めることが、円滑な本店移転登記には不可欠です。
登記申請書の作成と記載例
本店移転登記において最も重要な書類の一つが登記申請書です。この書類には、会社の基本情報、移転に関する決定事項、登録免許税額、添付書類などを正確に記載する必要があります。管轄内外の移転によって記載内容や添付書類が異なるため注意が必要です。
登記申請書の基本的な記載項目は以下の通りです。
- 商号
- 本店
- 登記の事由(本店移転)
- 登記すべき事項(新本店所在地、移転日など)
- 登録免許税額
- 添付書類
- 申請年月日
- 申請人(会社法人等番号、商号、本店、代表者の氏名、住所、連絡先電話番号)
- 代理人(司法書士に依頼する場合)
具体的な記載例は法務局のウェブサイトで提供されているひな形(ひな形はこちら)や、専門書を参考に作成することをお勧めします。誤りがあると補正の対象となり、登記完了が遅れる原因となるため、慎重な作成が求められます。
本店移転の登記手続き
申請方法
作成した申請書と必要書類を、会社の本店所在地を管轄する法務局に提出します。管轄外本店移転の場合は、新旧本店所在地を管轄する法務局へ提出する2通の申請書を、まとめて旧本店所在地を管轄する法務局へ提出します。申請は、登記・供託オンライン申請システムを使用してオンラインで申請するか、紙の申請書を会社の所在地を管轄する法務局に提出します。紙の申請書の場合、郵送(実務上レターパックを使用することが多いです。添付書面の原本還付を希望する場合、その分のレターパックも同封します)での申請も可能ですが、窓口で直接申請することもできます。電子申請の場合は、マイナンバーカードに格納されている電子証明書等が必要になります。
各申請方法にはメリット・デメリットがありますので、会社の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。登記手続きに慣れている場合は、オンラインで電子申請して、必要に応じて添付書面のみを郵送で送るのが楽だと思いますが、初めて手続きをする方は、紙で申請書を作成して、窓口に提出するか、郵送で送った方が難易度は低いです。
それぞれの手順やメリット・デメリットを詳しく解説します。
紙による申請
従来から行われている申請方法です。必要書類を揃えて、管轄の法務局へ直接持参するか、郵送で提出します。
紙による申請の手順
- 申請書類を作成・印刷する
- 必要書類を収集する
- 登録免許税を収入印紙で納付する(収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼ります)
- 法務局へ持参または郵送で提出する
- 申請内容の審査
- 登記完了(登記簿謄本の交付)
紙による申請のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
インターネット環境が不要 | 法務局へ行く必要がある、または郵送の手間がかかる |
はじめて登記申請をする人にはオンラインよりも難易度が低め | 書類の不備があった場合、補正で法務局まで出向く必要がある。 |
電子申請
インターネットを利用して、登記・供託オンライン申請システムで申請を行う方法です。法務局へ行く必要がなく、月曜日から金曜日までの8時30分から21時まで(国民の祝日・休日、12月29日から1月3日までの年末年始を除く。)いつでも手続きが可能です。電子署名が必要となります。
電子申請の手順
- 電子証明書の取得(マイナンバーカードを使う場合は取得不要)
- 申請書類の作成(登記・供託オンライン申請システムで作成する)
- 申請
- 添付書面を郵送で法務局に送る
- 登録免許税のオンライン納付又は収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼って添付書面と一緒に郵便で送る
- 申請内容の審査
- 登記完了(完了後、必要に応じて登記簿謄本を請求する)
電子申請に必要なもの
- パソコン
- インターネット環境
- 電子証明書
- PDF作成ソフト
- ICカードリーダー
電子申請のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
平日8時30分から21時までの時間いつでも申請可能 | インターネット環境と電子証明書が必要 |
法務局へ行く必要がない | 電子申請システムの操作に慣れが必要 |
申請方法の選択
時間や手間をなるべく省きたい場合は電子申請、手続きに慣れていない又はインターネット環境がない場合は紙による申請がおすすめです。
申請先
登記の申請は「会社の本店所在地を管轄する法務局」に対して行います。上記に記載があるように、管轄外本店移転の場合の注意点としては、新旧本店所在地を管轄する法務局へ提出する2通の申請書を、まとめて旧本店所在地を管轄する法務局へ提出します。管轄法務局を調べるには、法務局のホームページを参照するか、「会社 登記管轄 ○○」のように、本店所在地を入れてインターネットで検索すると良いと思います。不動産登記と会社の登記では管轄が違う場合があります。申請先を間違えると、申請が却下されますので、注意が必要です。
登記完了
不動産登記と違い、法務局の手続きが完了しても登記を完了したことを証明する登記完了証や登記識別情報のような権利証は発行されません。
変更後の登記内容を確認したい場合は、別途、登記簿謄本(登記事項証明書)を窓口又は登記・供託オンライン申請システムで請求するか、登記情報提供サービスで確認します。費用は登記簿謄本の場合、オンライン請求で窓口受け取る場合が一番安く490円(郵送で送ってもらう場合は520円、書面申請の場合は600円)、登記情報サービスで閲覧する場合、331円です。
登記完了までの期間は、法務局の混雑状況にもよりますが、通常1週間から1か月程度です。管轄外移転の場合は、旧本店所在地を管轄する法務局と新本店所在地を管轄する法務局の両方で手続きが行われるため、管轄内移転よりも1週間程長くかかる傾向にあります。
登記完了後には、取引先や金融機関などへの連絡、ウェブサイトの更新、名刺の変更など、必要な手続きを行いましょう。
よくある質問
本店移転登記にかかる期間はどれくらいですか?
本店移転登記にかかる期間は、主に「準備期間」と「法務局での処理期間」に分けられます。それぞれの期間は、移転の状況やご自身で手続きを行うか、司法書士に依頼するかによって変動します。
1. 準備期間:数日~1週間程度
- 株主総会議事録や取締役会議事録の作成、定款の確認、印鑑証明書の取得、登記申請書の作成など、必要書類を準備する期間です。
- ご自身で行う場合は、書類のひな形探しや内容確認に時間がかかることがあります。
- 司法書士に依頼する場合は、専門知識があるためスムーズに準備が進み、期間を短縮できる傾向にあります。
2. 法務局での処理期間:1週間~1か月程度
- 登記申請書を法務局に提出してから、登記が完了するまでの期間です。
- 管轄の法務局の混雑状況や申請内容に不備がないかによって変動します。
- 申請内容に不備があった場合は、法務局からの補正指示に対応する必要があり、その分完了までの期間が延びます。
- 管轄外移転の場合は、旧本店所在地を管轄する法務局と新本店所在地を管轄する法務局の両方で手続きが行われるため、管轄内移転よりも1週間程長くかかる傾向にあります。
これらの期間を合計すると、おおよそ2週間から1ヶ月程度で本店移転登記が完了することが一般的です。ただし、書類準備の難航や法務局の繁忙期など、様々な要因で期間が延びる可能性もあります。
費用はどれくらいかかりますか?
費用は大きく分けて、登録免許税と書類の郵送費用などの実費と、司法書士に依頼する場合の報酬がかかります。本店移転の場合の費用は、本店を移転する場所が現在の法務局の管轄内であるか、それとも管轄外であるかによって大きく異なります。
移転区分 | 司法書士報酬の相場 | 登録免許税 | 郵送料 | 合計 |
---|---|---|---|---|
管轄内移転(現在の法務局の管轄区域内で本店を移転する場合) | 2万円~5万円 | 3万円 | 2000円~ | 5万円~ |
管轄外移転(現在の法務局の管轄区域外へ本店を移転する場合) | 4万円~8万円 | 6万円 | 3000円~ | 10万円~ |
登記申請が補正や却下になった場合どうなりますか?
管轄外本店移転の場合は、旧本店所在地の管轄法務局に対して、新本店所在地分も含めて同時に申請するというルールがあります。このルールを守らなかった場合は、登記申請が「却下」になり、初めからやり直しをすることになります。
また、「補正」は、登記申請の申請内容や書類に不備があった場合、法務局から「補正」の指示が出されます。補正とは、書類の不足や記載内容の誤りなどを修正・追加するよう求められることです。補正指示が出ると、法務局に出向いて修正を行うか、不足書類を提出するなどの対応が必要となり、登記完了までの期間が延びてしまいます。
特に、不慣れな方が書類を作成すると、誤字脱字、記載漏れ、添付書類の不足、印鑑の押し間違いなど、様々な不備が生じやすいため、細心の注意を払う必要があります。正確な書類作成と確認が、スムーズな登記手続きの鍵となります。
本店移転登記の期限と遅延による過料はどれくらいかかりますか?
会社の本店移転登記は、移転の効力が発生した日から2週間以内に管轄の法務局へ申請することが会社法によって義務付けられています。この期限を過ぎて登記申請を行った場合、会社法第976条に基づき、代表者個人に対して100万円以下の過料が科される可能性がありますが、相場は2~5万円程度で、10年以上放置していた場合に、10万円の過料が科されたケースもあるようです。
まとめ
本店移転登記は、会社の本店所在地を変更する際に法的に義務付けられた重要な手続きです。必要書類は、管轄内移転か管轄外移転かによって異なり、それぞれのケースで正確に準備することが不可欠です。登記には期限があり、遅れると過料の対象となるリスクもあるため、計画的な準備と迅速な申請が求められます。手続きに不安がある場合や、多忙で時間がない場合は、司法書士のような専門家に依頼することで、書類作成のミスを防ぎ、スムーズかつ確実に登記を完了させることができます。本記事で解説した情報を参考に、適切な手続きを進めましょう。
ルフレ司法書士事務所では、設立登記をはじめ、本店移転登記など、会社の登記に関する様々な業務を扱っております。司法書士が、迅速丁寧にお客様の状況に合わせた最適なサポートを提供いたします。
会社の手続きでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。