会社の役員変更登記のポイント|必要書類・手続き方法・よくあるミスを司法書士が解説

役員変更が発生したら、2週間以内に変更登記を行う必要があります。また、任期満了により同じ役員を選任したときも、変更登記が必要です。本記事では、役員変更登記の全体像を、必要書類、手続き方法、費用、そしてよくある質問を掲載することで分かりやすく解説します。登記の種類や必要となるケース、手続きを怠った場合のリスクを理解することで、スムーズかつ正確な登記手続きを実現できます。

司法書士が監修した正確な情報に基づき、就任承諾書や印鑑証明書などの必要書類、法務局への申請方法やオンライン申請、そして司法書士への依頼方法まで、網羅的に解説。さらに、登録免許税や司法書士報酬の相場など、費用面についても明確に示します。よくあるミスを事前に把握することで、時間とコストの無駄を省き、適切な手続きを進めることができます。役員変更登記に関する疑問を解消し、安心して手続きを進められるよう、必要な情報をすべて提供します。

目次

役員変更登記とは

会社法では、株式会社等の役員(取締役、代表取締役、監査役など)に変更があった場合、その変更内容を法務局に登記する義務があります。これを「役員変更登記」といいます。役員変更登記を行うことで、会社の新たな体制を対外的に公示し、取引の安全性を確保する役割を果たします。登記によって、第三者は会社の登記簿謄本を取得することで、最新の役員情報を確認することができます。

役員変更の種類

役員変更には、様々な種類があります。代表的なものとしては以下が挙げられます。

  • 就任:新たな役員が就任する場合
  • 退任:任期満了や資格喪失を理由に役員が退任する場合
  • 重任:任期満了した役員が引き続き就任する場合
  • 死亡:役員が死亡した場合
  • 解任:株主総会決議などにより役員を解任する場合
  • 辞任:役員が自ら辞任する場合
  • 代表取締役の住所・氏名変更:代表取締役の住所や氏名が変更になった場合
  • 取締役、監査役の氏名変更:取締役や監査役の氏名が変更になった場合

役員変更登記が必要なケース

役員に変更があった場合、変更登記を行う必要があります。具体的には、上記の役員変更の種類に該当するケースは登記が必要です。登記手続きを忘れるケースで多いのが、上記に記載がある「重任」の場合です。任期が満了した後、同じ人が選任された場合、役員の変更がないので、役員変更の登記は必要ないと思っている方がいらっしゃいますが、こちらも登記が必要です。

役員変更登記を怠るとどうなるか

役員変更登記を怠ると、裁判所から100万円以下の過料が科される可能性があります。さらに、登記がされていないことで、会社の信頼が低下するリスクもあります。

これらのリスクを避けるためにも、役員に変更が生じた場合は速やかに変更登記手続きを行うことが重要です。変更登記の具体的な手続きや必要書類については、後述する章で詳しく解説します。

役員変更登記の必要書類

役員変更登記を行う際には、変更内容に応じて様々な書類が必要となります。必要な書類を漏れなく準備することで、手続きをスムーズに進めることができます。ここでは、代表的な必要書類について詳しく解説します。

株式会社(及び有限会社)の場合

株式会社(及び有限会社)が取締役の就任登記を申請する際には、以下の書類を準備する必要があります。

必要書類内容
登記申請書法務局へ提出する申請書で、フォーマットは法務局のホームページからダウンロードできます
株主総会議事録株主総会で役員を選任した旨を記載します。
株主リスト株主構成を一覧にまとめた書類。
就任承諾書選任された役員の就任承諾書
印鑑証明書取締役会のない会社が取締役の就任登記をする場合、および取締役会がある会社の代表取締役の就任登記をする場合に必要
本人確認証明書印鑑証明書を添付する必要のない取締役が就任する場合に必要
委任状司法書士に登記手続きを委任する場合

合同会社の場合

合同会社の業務執行社員の加入の場合は、以下の書類の提出が必要です。

必要書類内容
登記申請書法務局へ提出する申請書で、フォーマットは法務局のホームページからダウンロードできます。
総社員の同意書社員全員が承認した同意書。
定款定款の定めに基づく互選により、加入する業務執行社員を代表社員と定めた場合に必要
互選書定款の定めに基づく互選により、加入する業務執行社員を代表社員と定めた場合に必要
就任承諾書定款の定めに基づく互選により、加入する業務執行社員を代表社員と定めた場合に必要
委任状司法書士に登記手続きを委任する場合

NPO法人の場合

NPO法人の理事の就任の場合は、以下の書類の提出が必要です。

必要書類内容
登記申請書法務局へ提出する申請書で、フォーマットは法務局のホームページからダウンロードできます。
社員総会議事録
定款
互選書特定の理事のみが法人を代表する旨の定款の定めがあり、理事長を互選により選定した場合には、理事の互選書を添付します。
就任承諾書
印鑑証明書
委任状司法書士に登記手続きを委任する場合

一般社団法人の場合

一般社団法人の理事が就任する場合は、以下の書類の提出が必要です。

必要書類内容
登記申請書法務局へ提出する申請書で、フォーマットは法務局のホームページ(一般社団法人)からダウンロードできます。
社員総会議事録
定款理事会のある一般社団法人が、社員総会の決議により、代表理事を選定した場合、または 理事会のない一般社団法人が、理事の互選により、代表理事を選定した場合に必要
理事会議事録または理事の互選書代表理事が就任する場合に必要
就任承諾書
印鑑証明書理事会のある一般社団法人は、代表理事が就任する場合、それ以外の一般社団法人は理事が就任する場合に必要
本人確認証明書印鑑証明書を添付しない場合に必要
委任状司法書士に登記手続きを委任する場合

役員変更の登記手続き

申請方法

作成した申請書と必要書類を、会社の本店所在地を管轄する法務局に提出します。申請は、登記・供託オンライン申請システムを使用してオンラインで申請するか、紙の申請書を会社の所在地を管轄する法務局に提出します。紙の申請書の場合、郵送(実務上レターパックを使用することが多いです。添付書面の原本還付を希望する場合、その分のレターパックも同封します)での申請も可能ですが、窓口で直接申請することもできます。電子申請の場合は、マイナンバーカードに格納されている電子証明書等が必要になります。

各申請方法にはメリット・デメリットがありますので、会社の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。登記手続きに慣れている場合は、オンラインで電子申請して、必要に応じて添付書面のみを郵送で送るのが楽だと思いますが、初めて手続きをする方は、紙で申請書を作成して、窓口に提出するか、郵送で送った方が難易度は低いです。

それぞれの手順やメリット・デメリットを詳しく解説します。

紙による申請

従来から行われている申請方法です。必要書類を揃えて、管轄の法務局へ直接持参するか、郵送で提出します。

紙による申請の手順

  1. 申請書類を作成・印刷する
  2. 必要書類を収集する
  3. 登録免許税を収入印紙で納付する(収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼ります)
  4. 法務局へ持参または郵送で提出する
  5. 申請内容の審査
  6. 登記完了(登記簿謄本の交付)

紙による申請のメリット・デメリット

メリットデメリット
インターネット環境が不要法務局へ行く必要がある、または郵送の手間がかかる
はじめて登記申請をする人にはオンラインよりも難易度が低め書類の不備があった場合、補正で法務局まで出向く必要がある。

電子申請

インターネットを利用して、登記・供託オンライン申請システムで申請を行う方法です。法務局へ行く必要がなく、月曜日から金曜日までの8時30分から21時まで(国民の祝日・休日、12月29日から1月3日までの年末年始を除く。)いつでも手続きが可能です。電子署名が必要となります。

電子申請の手順

  1. 電子証明書の取得(マイナンバーカードを使う場合は取得不要)
  2. 申請書類の作成(登記・供託オンライン申請システムで作成する)
  3. 申請
  4. 添付書面を郵送で法務局に送る
  5. 登録免許税のオンライン納付又は収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼って添付書面と一緒に郵便で送る
  6. 申請内容の審査
  7. 登記完了(登記簿謄本の交付)

電子申請に必要なもの

  • パソコン
  • インターネット環境
  • 電子証明書
  • PDF作成ソフト
  • ICカードリーダー

電子申請のメリット・デメリット

メリットデメリット
平日8時30分から21時までの時間いつでも申請可能インターネット環境と電子証明書が必要
法務局へ行く必要がない電子申請システムの操作に慣れが必要

申請方法の選択

時間や手間をなるべく省きたい場合は電子申請、手続きに慣れていない又はインターネット環境がない場合は紙による申請がおすすめです。

申請先

商号変更登記の申請は「会社の本店所在地を管轄する法務局」に対して行います。管轄法務局を調べるには、法務局のホームページを参照するか、「会社 登記管轄 ○○」のように、本店所在地を入れてインターネットで検索すると良いと思います。不動産登記と会社の登記では管轄が違う場合があります。申請先を間違えると、申請が却下されますので、注意が必要です。

登記完了

不動産登記と違い、法務局の手続きが完了しても登記を完了したことを証明する登記完了証や登記識別情報のような権利証は発行されません。

変更後の登記内容を確認したい場合は、別途、登記簿謄本(登記事項証明書)を窓口又は登記・供託オンライン申請システムで請求するか、登記情報提供サービスで確認します。費用は登記簿謄本の場合、480円(郵送で送ってもらう場合は500円)、登記情報サービスで閲覧する場合、331円です。

登記完了までの期間は、法務局の混雑状況にもよりますが、通常1週間から2週間程度です。通常より早く完了する場合もあります。

登記完了後には、取引先や金融機関などへの連絡、ウェブサイトの更新、名刺の変更など、必要な手続きを行いましょう。

費用

費用は、司法書士に依頼するかどうかにもよりますが、例えば、資本金が100万円の株式会社の役員変更をご自身で行った場合、12,000円程度です。

項目金額
登録免許税10,000円(資本金が1億円を超える場合、30,000円)
郵送費・交通費1,000~2,000円程度
司法書士費用 ※司法書士に依頼する場合相場20,000円~40,000円

※NPO法人、社会福祉法人、医療法人、学校法人、管理組合法人は登録免許税がかかりません。その他にも、登録免許税がかからない法人があります。

申請期限

役員変更が事由が発生してから、2週間以内に速やかに登記申請を行う必要があります。

申請期限を過ぎるとどうなるか

これらの期限は、変更の事実が発生した日から起算されます。役員変更が発生した日から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。期限を過ぎてしまうと、100万円以下の過料が科せられる可能性があります。

役員変更登記に関するよくある質問

役員変更登記について、よくある質問とその回答をまとめました。疑問点を解消し、スムーズな手続きを進めるためにお役立てください。

商号変更登記にかかる期間は?

商号変更登記の手続きにかかる期間は、法務局に申請してから、手続き完了まで通常1~2週間程度です。ただし、法務局の混雑状況により時間が延びることがありますので、余裕を持ったスケジュールを立てることをお勧めします。また、書類に不備があった場合は、修正の時間が生じるため、その分の完了まで期間がかかります。

取締役の任期は?

株式会社における取締役の任期は、多くの会社が該当する非公開会社の場合、会社法で最長10年と定められています(会社法第332条)。そのため、定款で任期を10年に定めることも可能です。ご自身の会社の役員の任期については、定款に記載がありますので、ご確認ください。任期満了に伴う重任登記も、役員変更登記の一つです。この登記は、忘れがちですので注意が必要です。

役員に変更がない場合でも登記手続きは必要ですか?

上記に記載したように、任期満了に伴う重任登記も、役員変更登記の一つです。この登記を忘れてしまうと、登記官の職権により、みなし解散の登記がされてしまうリスクもありますので、注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。「みなし解散の放置の危険性!会社に何が起こる?ペナルティから対策まで徹底解説

変更登記の申請場所は?

役員変更登記の申請場所は、本店所在地を管轄する法務局です。登記申請は、郵送、窓口での持参、オンライン申請のいずれかの方法で行うことができます。オンライン申請には、電子証明書が必要となります。

管轄法務局を調べるには、法務局のホームページを参照するか、「会社 登記管轄 ○○」のように、本店所在地を入れてインターネットで検索すると良いと思います。不動産登記と会社の登記では管轄が違う場合があります。申請先を間違えると、申請が却下されますので、注意が必要です。

取締役会設置会社と取締役会非設置会社で手続きに違いはありますか?

取締役会設置会社の場合は、取締役会の決議で代表取締役が選任されます。一方、取締役会非設置会社が代表取締役を選任する場合は、①定款に直接、代表取締役の名前を記載する方法、②取締役の互選で決める方法、③株主総会の決議で決める方法があります。必要となる書類も異なりますので、注意が必要です。

就任承諾書や辞任届はどのような形式で作成すれば良いですか?

下記を参考に作成いただければと思いますが、注意点がいくつかあります。

【就任承諾書の注意点】
1.印鑑証明書又は本人確認証明書を添付する場合は、各証明書の記載のとおりに住所を書く。
2.印鑑証明書を添付する必要ある場合は、登録された実印を押印する。
3.取締役会がない会社で取締役全員が代表である場合を除き、取締役の就任承諾書を添付する場合でも、別途代表取締役としての就任承諾書も必要。

【辞任届の注意点】
1.登記所に印鑑を届け出ている取締役が辞任するときは、登記所に登録された実印を押印するか、市区町村に登録している個人の実印を押印します。個人の実印を押印した場合は、印鑑証明書を添付する必要があります。
2.代表取締役の辞任について、下記のいずれかに該当する場合、登記簿上の住所と辞任届の住所(又は印鑑証明書に記載の住所)が同じである必要があります。一致しない場合、辞任登記の前提として、住所変更登記が必要になります。
 ① 辞任届に住所を記入した場合
 ② 辞任届に住所を記載がなくても、代表取締役の個人の印鑑証明書を添付する必要がある場合

まとめ

役員変更登記は、変更の種類(就任、退任、重任など)や、株式会社か合同会社かといった会社の形態によって、必要書類や手続きが異なります。本記事では、役員変更登記の概要、必要書類、手続き方法、費用などを解説しました。

また、登記申請には期限があるため、変更事実発生後速やかに手続きを進めることが重要です。期限を過ぎてしまうと過料が発生する可能性があります。

ルフレ司法書士事務所では、設立登記をはじめ、役員変更など、会社の登記に関する様々な業務を扱っております。司法書士が、迅速丁寧にお客様の状況に合わせた最適なサポートを提供いたします。

会社の手続きでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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