相続で揉める家族の特徴や揉めないための対策をトラブルのケースと併せて紹介

相続 トラブル

相続は、残されたご家族全員が納得し安心できる形で行いたいものですが、実際には家族間での対立が起きやすいテーマでもあります。特に、ご家族と普段からコミュニケーションが取れていない状況だったり、面識のない相続人がいたりするとすると、公平性の問題や感情的な軋轢が生まれ、スムーズな相続が難しくなることが多いです。

相続にまつわるトラブルは、親族の信頼関係に深刻な影響を与える可能性があるため、事前の対策が必要不可欠です。この記事では、相続でトラブルが生じやすい家族の特徴と、それを避けるための効果的な対策について詳しく解説します。

目次

相続で揉めるケースは相続経験者の5人に1人

日本において相続トラブルは決して珍しいものではありません。実際、相続経験者の約20%、つまり5人に1人が相続に関するトラブルを経験しているというデータもあり、家族内で相続が発生する際にどれほどの確率でトラブルが生じ得るかがわかります。このような事態を避けるためには、家族全員で早い段階からしっかりと準備を進めることが重要です。

出典:ベンナビ相続 【経験者344人に聞いた!】相続トラブル第1位は「遺産分割に関するトラブル」

相続で揉める家族の特徴13

相続トラブルが発生しやすい家族にはいくつかの特徴があり、それぞれのケースによってどのようなトラブルが生じやすいかが異なります。

  • 相続人の人数が多い
  • 親族間で仲が悪い
  • 遺産に不動産がある
  • 相続人の一人が被相続人の所有物件に同居している
  • 相続人の一人が財産の管理をしている
  • 相続人の一人が被相続人の介護をしていた
  • 被相続人が事業を行っている
  • 被相続人に借金がある
  • 相続人の中に行方不明者や認知症の人がいる
  • 高額な生前贈与があった
  • 婚外子や前の配偶者との子がいる
  • 内縁の配偶者がいる
  • 遺言書が不公平

これらの特徴が当てはまる家族は、そうでない場合に比べて相続トラブルのリスクが高くなります。以下で、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

相続人の人数が多い

遺産分割協議は相続人全員で行います。相続人の数が多いと、その分だけ色々な意見がでてくる可能性が高くなり、話し合いがまとまりにくくなります。たとえば、遺産分割の配分を巡って意見が対立した場合、最終的に家庭裁判所による遺産分割調停に発展するケースもあります。遺産分割調停は半年~2年程かかることが多いです。

親族間で仲が悪い

親族間の仲が良くない場合、トラブルが発生しやすくなります。特に、過去のいざこざや長年の不満が蓄積していると、相続の話し合いで意見が対立し、遺産分割協議がまとまらずに、感情的な問題に発展することがあります。こちらも上記と同様に、最終的に遺産分割調停に発展するケースもあります。

遺産に不動産がある

遺産に不動産が含まれる場合で、他に現金がほとんど無い場合等、相続人間でトラブルが発生しやすくなります。相続人の一人が対象の不動産に住んでいる場合、売却することも難しくなり、選択肢が限られてしまいます。

どうしても相続によって現金が欲しい相続人がいる場合、不動産を売却して現金を分割する(換価分割と言います)ことを求めてくる可能性も考えられますが、その不動産に住んでいる相続人にとっては住まいが無くなるわけですから、それは阻止したいと考えるわけです。自己の財産から現金を渡すことで解決することもできますが、まとまった現金が無い場合、この手段も難しくなります。

また、売ることができないような不動産が相続財産の中にある場合、相続人の誰が管理するか、維持費を支払うかについても揉めやすいです。

相続人の一人が被相続人の所有物件に住んでいる

上記にも記載したように、被相続人の物件に住んでいる相続人がいる場合、遺産分割協議が難しくなることがあります。また、遺産を受け取ることができない、他の相続人から公平性に疑問を持たれることもあります。

相続人の一人が財産の管理をしている

財産を相続人の一人が管理している場合、その透明性に疑問が生じやすく、不信感がトラブルに発展するリスクがあります。例えば、相続人の一人が被相続人の預貯金を管理している場合、勝手に引き落として使っているんじゃないか?と考える相続人もでてくることもあります。

相続人の一人が被相続人の介護をしていた

被相続人が生前に介護を受けていた場合、その介護をしていた相続人が相続財産の配分について不公平感を抱くことがあります。他の相続人と同じ相続財産の配分だと、介護をしていた相続人は、その貢献度が正当に評価されないと感じ、トラブルに発展しやすくなります。このような場合、介護をしていた相続人としては、実際にかかった介護の費用や時間を計算し、エビデンスとして残しておくことで、他の相続人の納得を得やすくなります。

被相続人が事業を行っている

被相続人が生前に事業を営んでいた場合、相続時にその事業の継承や株式の分配方法が問題になることがあります。

事業承継においては、生前に会社の代表者である被相続人が後継者を決めて、後継者に引き継ぎをしていたケースであれば問題ないですが、そうではないケースだと、誰が事業の経営を引き継ぐかや、株式の分配方法について意見が対立することが考えられます。例えば、ある相続人が事業を継続したいと考えている一方、他の相続人は事業を売却して現金を分配したいと主張する場合があります。

被相続人に借金がある

被相続人が借金を抱えている場合、原則として、各相続人は法定相続分に応じて負担することになりますが、遺産分割協議で負担割合を決めることもできます。この場合、全ての相続人が同意する必要があります。

また、この場合、各相続人は単独で借金の返済を拒むために相続放棄を選択しようとすることもできます。しかし、相続人全員が同意して放棄しない限り、特定の相続人に負担が集中する可能性もあります。相続放棄をしたくない相続人と、相続放棄をしたい相続人との間で対立が生じやすくなります。

相続人の中に行方不明者や認知症の人がいる

相続人に行方不明者や認知症を患っている人がいる場合、相続手続きが複雑化します。行方不明者がいる場合には不在者財産管理人の選任の申し立てが必要になり、認知症を患っている場合には成年後見制度の利用が必要になり、それぞれ裁判所への手続きが必要となります。

不在者財産管理人の選任の申し立ての手続きは、通常数か月かかりますので、スムーズに進まないと、遺産分割を急いでいる相続人から不満の声が上がることがあります。また、認知症の相続人がいる場合、その相続人の成年後見人を誰にするかで、他の相続人と意見が対立することがあります。たとえば、家族内で特定の相続人が後見人を希望する一方で、他の相続人がその人の公正性に疑問を抱くと、手続きに時間がかかる場合があります。

高額な生前贈与があった

特定の相続人に対して、高額な生前贈与が行われている場合、その贈与の公平性に疑問を持たれることが多く、他の相続人との間でトラブルに発展する可能性があります。原則として、生前贈与が特別受益と認められる場合、生前贈与の金額を含めて遺産分割協議をすることになります。この場合は、不公平にはならないため、トラブルには発展し難いかと思いますが、全ての生前贈与が特別受益として認められるわけではないため、不満が生じる原因になります。

婚外子や前の配偶者との子がいる

婚外子や前配偶者との子供が相続に関与する場合、感情的な対立や相続権の公平性に関する問題が生じることがあります。法的には認知された婚外子や前の配偶者の子供にも、他の子供と同様の割合の相続権がありますが、感情的な問題により、実際に遺産をどう分けるかで相続人間で摩擦が生じることがあります。

内縁の配偶者がいる

内縁の配偶者には法的な相続権がないため、残された配偶者は一切遺産を受け取ることができませんが、下記のような場合、相続人との争いに発展しやすいです。

内縁の配偶者が相続権がないことによって非常に困る場面がでてきます。例えば、亡くなった内縁の配偶者名義の口座に、生活費を入金していた場合、残された配偶者は、相続権が無いことによって、生活ができなくなることが考えられます。また、亡くなった内縁の配偶者名義の不動産に住んでいた場合、不動産は相続人のものになるため、残された配偶者は相続人から追い出される可能性があります。

遺言書が不公平

遺言書が一部の相続人にとって不公平だと感じられる内容である場合、相続人間でトラブルが生じやすくなります。

遺言書が残っている場合でも、相続人全員で遺産分割協議をすることは可能です。話し合いも難しいケースの場合になると、特定の相続人が遺言書の無効を裁判所に主張することも考えられます。なお、原則として、遺言書がある場合は、遺産分割調停をすることができません。

家族が相続で揉めないためにできる対策

ここでは、相続で揉めないために実施できる具体的な対策を紹介します。

  • 定期的に家族全員で話し合う
  • 公平な内容の遺言書を残す
  • 家族信託を利用する

それぞれの対策は、相続をスムーズに進めるための具体的な手段です。以下で各対策を詳しく見ていきましょう。

定期的に家族全員で話し合う

日頃から家族間で意見を共有し、相続について各自の希望や考えを理解し合うことで、相続が発生した際にスムーズな話し合いが行えるようになります。また、家族全員が集まる場で話し合うことにより、特定の相続人だけが相続財産等の情報を持つ状態を避けられ、透明性も確保できます。

被相続人のご存命のうちに、亡くなった後の話をするのは、難しいこともあるかと思いますが、亡くなった後に残された家族が困らないためにも、話し合う機会を持つことはとても重要です。実際に、私のお客様で、年1回お盆で家族が集まったときに相続について話し合いをしているご家族がいらっしゃいます。

公平な内容の遺言書を残す

相続において揉めるリスクを減らすために、全ての相続人にとって公平な内容の遺言書を作成して残すことが効果的です。

原則として、遺言書は不公平な内容であったとしても有効です。たとえ不公平な内容であったとしても、ご家族の関係性が良く、事前に納得している内容であれば、揉めることは少ないかもしれません。ただし、人の感情や状況は、時と共に変わりがちですので、亡くなった後になって、主張を変えることも考えられます。

そこで、全ての相続人にとって公平な内容の遺言書を、公正証書または自筆証書の法務局の保管制度を使って残しておくことで、まず、遺言書自体の有効無効で揉めることは無くなるのと、遺産の分割について相続人間での意見の対立が減る可能性が高まります。せっかく作成した遺言書に財産の漏れや不備がないように、遺言書の作成には、弁護士や司法書士のサポートを受けることをお勧めします。また、作成時に相続人全員に相談しながら進めるのも有効です。

家族信託を利用する

家族信託は、認知症対策として知られている、信頼できる家族に財産を管理させる方法ですが、自由度が高いため、設計次第では相続トラブルを未然に防ぐためにも有力な手段です。

例えば、夫が亡くなって、その次に妻が亡くなった場合の、子供同士の争いを防止するための二次相続対策です。他にも色々な対策を立てることができます。信託契約は弁護士や司法書士通じて公正証書で作成することが一般的です。

遺産相続で揉めそうになったら弁護士に相談する

もし相続の過程でトラブルが発生しそうな場合は、早めに弁護士に相談することが重要です。弁護士は法律的な知識に基づいて助言を行い、相続人間の対立が深刻化する前に解決策を提案してくれます。さらに、弁護士が介入することで、相続手続きがスムーズに進むだけでなく、法的に有効な解決策が得られるため、トラブルの長期化も避けやすくなります。

まとめ

相続トラブルは、家族の絆を損なうだけでなく、長期間にわたる法的争いにも発展する可能性があります。しかし、事前に対策を講じることで、こうしたトラブルを未然に防ぐことが可能です。本記事で紹介したように、定期的な家族会議や法的効力を持つ遺言書の作成、家族信託の利用など、具体的な方法を用いることで、相続がスムーズに進む可能性が高まります。

ルフレ司法書士事務所では、相続登記をはじめ、相続放棄、遺産分割協議など、相続に関する様々な業務を扱っております。司法書士が、迅速丁寧にお客様の状況に合わせた最適なサポートを提供いたします。また、ご希望に応じて相続に強い弁護士さんや相続税の申告専門の税理士さんを紹介しております。

相続手続きでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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